逆風下でもビジネスをすかさず変化させる
④何があっても、あきらめるな
コロナ禍でデジタルシフトが加速したことは間違いなく、シリコンバレーには株価が大きく上昇した企業もありました。
しかし、シリコンバレーの企業がみなコロナ禍の悪影響を免れたのかといえば、もちろんそんなことはありません。
たとえばインスタワークという会社は、レストランなどのホスピタリティ業界に人材を派遣する事業を営んでいました。
シリコンバレーで順調に成長していたスタートアップだったのですが、コロナ禍によりアメリカでは1年以上もレストランが閉まり、インスタワークは大打撃を受けることになったのです
インスタワークの創業者のサミア・メガーニと私はハーバードの同級生で、苦境に陥る様子も知っていたのですが、心から「すごいな」と思ったのは、これほどの逆風下でも、しっかりビジネスモデルを作り変えて対応していったことです。
インスタワークが目をつけたのは、物流業界でした。実店舗に行けなくなった人たちがeコマースに流れた結果、配送網は逼迫して物流コストが上昇することになりました。
そこで、インスタワークは、すかさず物流業界への人材派遣業にシフトし、コロナ禍を生き抜いたのです。さらに経済がリオープンし始めると、ニーズが高まるパートタイム労働者の派遣を手掛け始め、業績を伸ばしています。
どんなビジネスであっても常に順風満帆ということはなく、コロナ禍のように避けようのない環境変化に見舞われることもあり得ます。そのような場面でも、粘り強くあきらめずに手を打ち続けることが大切なのです。
自分の周りの人たちをどう成功をさせるか
⑤自分の周りの人を成功させろ
先に、シリコンバレーのようなネットワークが大切にされる社会では、周囲の人に対して「成功してほしい」「出世してほしい」という気持ちを抱き、協力的になりやすくなるというお話をしました。
私はこれをさらに一歩進め、「自分の成功以上に、周りの人の成功が重要だ」と考えています。
振り返れば、現在の私につながる人々は三菱商事の同期であったりハーバード・ビジネス・スクールで一緒に学んだ人であったりします。
飛ぶ鳥を落とす勢いの次世代ベンチャーキャピタルであるトライブ・キャピタル創設者のアージン・セティや、大型ベンチャーファンドであるセコイア・キャピタルのジェフ・ウオン、投資業界最注目のヘッジファンドであるコーチューのトーマス・ラフォントとは親しく付き合っていますが、彼らも出会った頃はベンチャーキャピタリストとしてそれほど知られた存在ではありませんでした。
その彼らがのちに大きく成功していった結果、私はさまざまな機会を得ることになったわけです。
ですから私には、「周囲の人たちの成功のおかげで、自分がより興味深い世界に足を踏み入れていっている」という感覚があります。
みなさんもぜひ、「自分の周りの人たちをどう成功をさせるか」を考え、実際に周囲の人が成功できるよう手助けしていってください。
人の成功を妬んだり羨んだりしても、そこからは何も生まれません。
周囲の人の成功を願い、積極的に手助けすることが、結果的に自分の成功につながっていくはずです。