すると、パンだけを食べたときが最も血糖値が上がり、ビールを一緒に飲んだときが続いて血糖値を上げました。ところが、ワインやジンを一緒に飲んだケースでは、ほとんど血糖値は上がりませんでした。

つまり、アルコールは、血糖値を下げる方向に働くわけです。

「アルコール性低血糖」という症状

実際に「アルコール性低血糖」という症状があり、生化学の教科書である『デブリン生化学7版』にその事例が載っています。

39歳の女性が、バーでお酒を飲んでいたら意識朦朧もうろうとなって救急外来に運ばれました。

診察してみると、酔っ払ったことが原因ではありませんでした。朝から忙しく働いて空腹でいたところにお酒を飲んだら、血糖値が下がりすぎてしまったのです。

治療法としては、オレンジジュースを飲ませることでした。それで血糖値が上がったら、その女性は回復しました。

糖質ゼロのお酒は飲んでいい

私のクリニックを初めて訪れる糖尿病の患者さんたちには、「お酒は好きだけど、血糖値を上げるから我慢しています」という人が大勢います。

牧田善二『医者が教える最強の解毒術』(プレジデント社)

それまでかかっていた医療機関でそのように言われたのでしょう。

とんでもない間違いです。

私は彼らに、「飲んでください。むしろアルコールは血糖値を下げますよ」とアドバイスしています。

ビールが好きな患者さんには、最初の1缶だけは普通のビールにして、その後は糖質ゼロタイプに変えてもらっています。もちろん、最初から糖質ゼロタイプにできればそれが一番です。

日本人が危ないのはむしろ「アルコールに弱い体質」

とはいえ、摂取していい「適量」はあります。日本人はもともと、体質的にアルコールに弱いので、欧米人と同じように飲んでいたら肝硬変などの罹患りかん率が上がってしまいます。

お酒に強い人と弱い人がいるのは、その分解能力に差があるからです。