「ネクタイが売れない」1日中売り場に張り付いてわかったこと

また別の話で、百貨店チェーンのある店舗ではネクタイの売上がいつも悪かった。何度も品揃えを見直したり、流行っている最新のネクタイを仕入れたりと、改善を試みるのだが、なかなか売れない日々が続いていた。

しかし一方で、同じチェーンの他の店を調べると同じ品揃えにもかかわらずちゃんと売れていたのである。

担当マーケッターは「この地域の人はネクタイをしない人が多いのだろうか?」と考えたが、同じ地域の競合店や街を歩く人のネクタイの着用比率を見ると、どうもそうでもなさそうだ。

どうしても売れない理由がわからないということで、この担当マーケッターは1日中売り場に張り付いて、状況を観察した。

結果的にわかったのは、ネクタイ売り場の顧客導線が原因だった。ネクタイ売り場は靴下売り場と通路を挟んで向かい合わせになっていたが、この靴下売り場が大人気だったため通路が靴下を買う人で占拠され、ネクタイを買いたい人が買いづらい状況になっていたのである。

結局、棚をずらして通路の幅を広くすると、ネクタイの売上が急激に伸びた。

「品揃え」は関係なかったのである。

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このように何らかの傾向があった時に、顧客がなぜそのような行動を取ったのかという「要因」を調べることで大きく売上を伸ばせることがある。

調べる方法は顧客の行動や顧客の定量アンケートの“データ”ではなく、顧客の行動を“直接”観察すること、顧客に“直接”聞くこと、これらが一番効果的なのだ。

パソコンの画面の数字やデータは「きっかけ」を与えてくれているにすぎず、それらを見ているだけでは読解力は身につかない。

「数字」と「人間の生活」や「人間の心理」を組み合わせて、初めてデータの意味が読解できるのである。