データから傾向を見て人間行動の仮説を立てて施策の手を打つ

仮説の1つとしてあるのは、昼にスマホを見るのは電車に乗っていたり、仕事をしていたり、家事をしていたり、「ながら見」や「スキマ時間に見る」比率が高いことだ。

例えば電車での移動中にスマホを見ている人の場合、広告をクリックしてページを読んでいたけれど、降りる駅に着いたのでスマホ画面をオフにしたなど、ページの滞在時間が短い傾向にあることが考えられる。

そのような状況であれば、少なくとも興味があるからクリックしているのだが、「購入という判断を下す」ほどの集中力を持って見られていなかったと予測できるのだ。

そこまで考えて、次にこれに対してどう手を打つべきかを思案する。

このケースであれば、昼間は短いLPに差し替える、というのも1つの手だ。

夜に再度購入判断してもらうために、ブックマークを誘う文言を強調するという方法もある。

昼間は訪問履歴のある人に広告を配信するリターゲティングのマーク集めに特化し、クリック単価が安い配信面で幅広く配信し、夜に再度リターゲティングで刈り取るという方法もある。

このように考えることによって、「昼間の配信をストップ」して「採算が合っているもののみを残す」という手を取るのではなく、「昼間を採算化させる」ことで「上限獲得単価内に収めながら件数を拡大する」というプロのWebマーケッターの仕事ができるのである。

簡単に言うと、データから傾向を見て直接配信設定を調整するのはデジタルオペレーター。

データから傾向を見て人間行動の仮説を立てて施策の手を打つのがWebマーケッター。

テクニカル運用をやるにはデータの読解力を身につけることが必須なのだ。

缶ビールを買う人が一緒におむつを買う理由

「データ」から「人間の行動パターン」を見つけ、そのパターンの背景を理解し、販促につなげることが本当のマーケティングだ。

これは普遍的なマーケティングの本質であり、リアルマーケティングだろうがWebマーケティングだろうが変わらない。

このことがわかる実例を見ていこう。

有名な話だが、アメリカのあるショッピングセンターで顧客の購買データを分析したら「缶ビールを買う人は、一緒におむつを買っている人が多い」という傾向がわかった。

スーパーマーケットの棚から缶ビールを手に取る客の手
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

これを単純に解釈して、缶ビールを買った人にリコメンド機能で「一緒におむつもどうですか?」とすすめるのは間違いだ。当然、缶ビールを購入している人のほとんどがおむつを一緒に買うわけではないからだ。「なんでおむつをすすめるの?」と不審に思うだろう。

ここでは「なぜ缶ビールを買う人は、一緒におむつを買っている人が多いのか」の背景を理解しなければならない。

おむつと缶ビールに直接的な関連性があるとは思いづらいが、この両者の関連性がわからないと何をどうすれば売上拡大につながるかが見えてこない。

どうしてもわからないということで、あるマーケッターは1週間その店のレジに張り付くことにした。

そしてわかったことは、「普段は持てないような重いものを、週末に車で夫について来させてまとめ買いする夫婦が多い」ということだった。

その代表格がおむつと缶ビールの組み合わせだったのだ。

このことがわかったあと、このショッピングセンターでは「週末まとめ買いコーナー」を設けて、おむつと缶ビールはもとより、ミネラルウォーター、粉ミルク、トイレットペーパー、洗剤、ドッグフード、猫砂など家庭用品で重い物を1カ所に集めて陳列した。それによって買い合わせを誘発し、週末の売上を伸ばしたのである。