離乳食にすごく時間や手間をかける必要はない

さて、離乳食について調べると、大変そうに思えるものが多いですね。すごく手のこんだ「離乳食レシピ本」、10倍粥から始めて徐々に濃いお粥にするという「育児書の解説」、子供用の食材は特別なものを使い、特に魚は刺身用の柵を買ってきて外側を切り落としたものを使うなどと教える「離乳食教室」……。私は離乳食ももっと気軽に、普通の食事の延長線上にあるべきだと思います。

離乳食だからといって、すごく手間や時間をかける必要は特にありません。生モノや消化のよくないキノコ、ハチミツなどの年齢的に食べられない食材を避け、大人と同じ食事を味付けする前に取り分けて切ったり潰したりして食べやすくしたらいいのです。もちろん市販の瓶詰めやレトルトを使ってもいいでしょう。

離乳食の基本については、ママサイトや離乳食のレシピ本などを見るよりも、厚生労働省のホームページにある離乳スタートガイド別添「離乳食ざっくりスケジュール」がわかりやすく、内容も的確です。

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「10倍粥は薄すぎる」と小児科では言われてきた

そもそも、意外に思われる人がいるかもしれませんが、公の資料には離乳食の開始は「10倍粥から」などとは一切書かれていません。母子手帳を見てみましょう。「つぶしがゆから始める」と書いてありますね。小児科ではずいぶん以前から言われてきましたが、10倍粥では薄すぎるのです。母乳や育児用ミルクしか飲んでいなかった子にあげるものなので、同じくらいのカロリーがないと栄養不足になってしまいます。

じつはWHOの「補完食(※2)についてのガイドを見ても、その国ごとに主食になっているものを柔らかくして食べさせます。そのペースト状に柔らかくしたものの濃度は、スプーンですくって容易に落ちない程度の濃さです。母乳や育児用ミルク以外の味を体験させるために、少し10倍粥をあげるのはいいでしょう。でも、水っぽいお粥でお腹が一杯になってしまってはいけません。ちなみに、WHOの『補完食』を見ると、日本の離乳食の固定観念から自由になったり、食事を嫌がる子にどうアプローチしたらいいのかのヒントが見つかることもあるでしょう。

※2 補完食とは、母乳に足りない栄養を補うための食事のこと。離乳食も大人のような食事を食べられるようになる前に食べさせる、母乳と普通食の間の食事ですね。離乳食も母乳で不足する栄養を補いますから、同じものとしてここでは離乳食という言い方に統一します。