「孤独」にはプラスもマイナスもある

一人暮らしの人が増えていることもあって、孤独をどう生きるかということがいろいろ論じられています。

枡野俊明『やめる練習』(プレジデント社)

孤独というと不安で寂しいものというマイナスのイメージがつきまといますが、果たしてそうなのでしょうか。

孤独と一口でいってもいろいろな面があります。人と交わりたいのに誰も相手にしてくれないという孤立した状態はたしかに寂しいものです。

しかし、孤独には積極的な意味もあります。自分の心と静かに向き合い、そこに流れる、ゆったりとした時間を楽しむ。人と一緒にいては持ちえない滋味豊かな時間です。

孤独を掘り下げることで、心がわくわくするような新しい発見をすることもあるでしょう。これなど、孤独が与えてくれる醍醐味ではないでしょうか。

良寛さんの「孤独を堪能する」生き方

江戸後期の僧侶、良寛さんは孤独を愛した人です。山のなかに庵を結び、光や風を感じながら自然と一体となった生活を送りました。小鳥のさえずりや川のせせらぎに心を遊ばせ、坐禅を組み、孤独のなかにある限りない豊かさを愛しました。

一人静かな時間を大切にしながらも、一方では食材を携えてときおり訪ねてくる村人とおしゃべりを楽しみ、子どもと鬼ごっこや手毬といった遊びに興じることもあったそうです。

良寛さんの生活には、孤立という寂しさはなく、孤独を堪能することで生まれる心豊かな時間が穏やかに流れているかのようです。