ネットでは「目立つ商品」「安い商品」が売れやすい

こうしたなか、リアルとネットでは「お店の方が、平均単価が高くなる」と横山さんは語る。

「ネットだと、オーソドックスな商品よりも目立つ商品が売れやすい傾向にあります。というのも、ネットは写真ありきで購買につながり、かつ安いものほど売れやすいからです。ただ、ネットではアルミと真鍮の素材による違いは実感できません。お店に来ればもっと多様なバリエーションを知ることができ、職人の匠の技や素材のこだわりが、見て取るようにわかるんです。ネットで商品を訴求しつつも、いかにリアルの場へ来てもらうかが、とても大事なことだと認識しています」

撮影=小野さやか
久月浅草橋総本店で長年売れ続けているという「彫金仁王大鎧木製二段飾り」

職人の高齢化と資材の高騰化が深刻

ニーズの多様化に伴い、さまざまな商品を供給していくことが求められる一方で、生産者の高齢化が大きな課題として重くのしかかっているという。

横山社長は「年々、職人の高齢化問題は加速しているため、久月も大きな使命感を背負って向き合っていかなければならない」と襟を正す。

「職人の高齢化によって、商品の生産能力は下がってきています。さらに、昨今の資材の高騰化によるクオリティや値段の維持が年々難しくなっているのも、追い打ちをかけています。今後どのようにして次世代へ受け継ぎ、伝統文化を維持していくかが、我々の果たすべき役割であり、大きな使命だと感じています。商品の数が売れなければ、生産者もいなくなってしまう。職人を守っていくためにも、世の中のニーズを汲みつつ、職人へ継続的に仕事を与えていくことが我々に課せられているものだと思っています」

撮影=小野さやか
店舗での顧客の様子も変化している。かつては五月人形を購入する際の発言権は男性が中心だったが、最近では女性になってきたという