ADHDであることをオープンにし、前向きに働けるように

数回の面談の中で彼には、彼の特性(ADHDの人には得意不得意や集中力の差があること)を変えることはできなくても、それに上手に付き合うことで、症状(気分障害や頭痛など)はコントロール可能なこと、そのためには何事もメモを取ることや夜更かしをしないなど自分のルールをしっかり持つ大切さを理解してもらいました。

また、会社にも協力してもらうため、彼の特性(ADHDであること)を会社にオープンにすることを聞いてみると、すぐに承諾してくれたため、主治医からの心理テストの結果や診療情報提供書とともに、上司等と産業医がすぐに連携を取れました。そして、業務における彼の得意・不得意は、彼の好き嫌いではなく、ADHDであるがゆえの特性によるものであることを上司も理解してくれました。

9月の産業医面談では、彼は、10月から部署異動になり自分の特性を活かせそうな業務内容になる予定だと表情明るくお話ししてくれました。通院と内服は継続していること、多少の症状はまだあることを確認しましたが、良い方向に向かってくれそうでした。

11月の面談では、通院しながら投薬量を調整していること、新しい上司やメンターもADHDに対して理解を示してくれていること、また、周囲の理解やサポートを得られていることを報告してくれ、本人自身も仕事に前向きに取り組めているようで、安心しました。

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「自分は間違った部門に来たのではないか」

3人目は発達障害とは関係のないCさんです。

Cさんは、入社数カ月でメンタル不調となり夏には休職を開始し、9月に初めて産業医面談に来られました。Cさんは、(新人研修が終わり)部門に5月に配属されて早々、自分は間違った部門に来たのではないかと思い始め、翌月6月にはそれが確信に変わり、即退職して第2新卒での就職活動をしようと思っていたとのことでした。

そのように思う理由を聞いてみると、他部署の同期(新入社員)には入社3~4年の先輩社員がついているのに、自分にはついていない。代わりに10年目の社員がチームにいるが、他部署の年齢の近い先輩たちのように親身に指導してくれない。部署の上司もそれをみてみぬふりをして、自分には雑用しか回してこない。そのため何もまだ覚えてなくてできない等々、不満はたくさんあるようでした。

そのような中で朝の調子が特に悪くなり、出社しても感情がコントロールできず人前で泣いてしまい、とうとう出社できなくなったとのことでした。医者にかかったのは、出社しなくなってから、人事に診断書が必要と言われたからでした。