「悪い円安」の原因は「アメリカの真逆」を行く日銀

答えはもちろん米国債です。米国債の利回りが上昇基調で、日本国債の利回りは抑えられる見込みですから、日米の金利差が拡大していきます。その場合、日本国債を売り、米国債を買う方が得になります。

目下起こっている「悪い円安」は、「日米金利差」の結果、円を売って、ドルを買う動きが強まっていることが理由なのです。

日銀は「指値オペ」によって日米金利差拡大を明確化したことで、「円の大暴落」の引き金を引いてしまったのです。

「悪い円安」に対して、日銀が取りうる選択肢は大きく2つあります。

1つ目は、今後も「指値オペ」を継続的に行い、10年国債の利回りを抑えて、今後も円安進行を容認する、という選択肢です。

2つ目は、10年国債の利回りの上昇を受け入れ、急激に進んでいる円安傾向を抑えるという選択肢です。

ただ、円安による輸入物価上昇と、景気後退が同時発生し、「スタグフレーション」となるリスクを考えると、日銀としては後者を選択するしかないように思います。

円の購買力は半世紀前の水準まで低下している

いま日本円はかなり円安で、円の購買力は50年前の水準まで低下していると言われています。わずか10年ほど前、当時の民主党政権下で「1ドル=80円」前後で推移していたことを考えると、大きな変化です。

それがなぜ「円安」になっているかですが、1つの理由として「アベノミクス」の影響であると考えて差し支えないように思います。

「アベノミクス」とは何かを語るのは簡単ではありませんが、その最大の「売り」が、日銀による大規模金融緩和であることは間違いないでしょう。

2012年末に第2次安倍政権が発足し、2013年3月に日銀総裁に黒田東彦氏が就任して以降、日銀は「大規模金融緩和」を実施しています。金融緩和とは、簡単に言うと、市中に出回るお金の量を増やす政策です。要するに、お金をたくさん刷っているわけです。