「サイズが合わなくても買う」その理由は…
ひと昔前まで、高額なヴィンテージデニムは一部のマニアが購入するジャンルでしたが、最近では、そこまで興味がなさそうな方が試着もせずに購入するケースが増えています。
明らかにサイズが合わないにもかかわらず、数十万円もするデニムを平然と買っていかれるので、お話を聞くと、投資目的であることが多数です。腕時計や楽器のように細かなメンテナンスを必要とせず、スニーカーのように著しく劣化しないヴィンテージデニムは、投資対象として魅力があるという考えは私も理解できます。
私は現在44歳で、人生の大半をヴィンテージデニムにささげていますが、この世界に興味を持ち始めた10代の頃から価格はなだらかに上昇していました。それでも現在のように、ここまで短期間で急騰することはありませんでした。
1995~97年頃のヴィンテージブームは日本国内に限られていたことでしたが、2010年以降はSNSが世の中に浸透したことで、タイやマレーシアなど東南アジア諸国の富裕層を皮切りに世界中に広まり、①ヴィンテージデニムの相場が世界市場で共通になったこと、さらに②多国間でのインターネット通販や個人間取引が一般化したこと、③投資目的の方が参入してきたことが大きな要因になっていると考えています。
掘り出し物のためなら…紛争地域に行く猛者も
あまり知られていない事実ですが、デニムを含むアメリカのヴィンテージ衣類にはじめて付加価値を付けたのは日本人です。1970年代、日本の貿易会社や商社のバイヤーたちは頻繁に渡米し、アメリカ全土のデニム店のストックルームから、日本人のサイズに合うものを根こそぎ買い漁って持ち帰ったのです。これが後に社会現象となった“アメカジブーム”を生み出すきっかけのひとつです。
1970年代より始まった日本のアメカジブーム以降、日本人バイヤーたちがアメリカ全土で根こそぎ買い漁り、90年代中盤頃になると、アメリカ国内はすでに品薄状態。スリフトショップ(寄付された古着や家具などを販売する店)や昔の倉庫、老舗の洋品店に至るまで、ありとあらゆるヴィンテージデニムを掘り尽くしてしまったのです。