2021年夏、ライターの國友公司さんは2カ月間、都内でホームレスとして過ごし、その体験を著書『ルポ 路上生活』(KADOKAWA)にまとめた。路上生活では、人気商品の「並び」など、あの手この手でお金を稼ぐホームレスに出会ったという――。(第4回)
筆者も荒川河川敷で暮らしていた際、空き缶拾いをしていた
筆者撮影
筆者も荒川河川敷で暮らしていた際、空き缶拾いをしていた

古参だけができる“仕事”

ホームレスの仕事として真っ先に思い浮かぶものといえば、空き缶拾いであろう。しかし、2カ月の間ホームレスとして過ごした身からすると、空き缶拾いで生計を立てているホームレスというのは実を言うと少数派だ。ある事情からなかなか手を出しづらい仕事となっており、空き缶拾いをできるホームレスは限られている。

東京の路上に住むホームレスは、基本的に24時間同じ場所にベース(寝床)を構えることができない。新宿駅西口地下広場や上野公園、隅田川などほとんどの場所では、夜にならないと地面にダンボールを敷くことができず、そのうえ朝になるとその場を退かなければならない。

空き缶拾いをする場合、自転車やリヤカーで街を回りながらときどき拾った空き缶をつぶして体積を小さくし、たまったら買い取り業者のもとへ持って行くことになる。すると、どうしても空き缶の山をどこかに保管しておく必要が出てくる。つまり、24時間同じ場所にベースを構えることができない路上のホームレスはこの保管ができない。

24時間ベースを構えられる場所がないホームレスでも空き缶拾いをしている人はいるが、かなりハード
筆者撮影
24時間ベースを構えられる場所がないホームレスでも空き缶拾いをしている人はいるが、かなりハード

例えば隅田川には24時間同じ場所に小屋を建て、空き缶拾いで生活しているホームレスが何人かいるが、現在は新たに小屋を建てようとするとすぐに撤去されてしまう。なぜか「昔からある小屋はOK」という状況になっており、ある意味空き缶拾いは、古参のホームレスたちの特権のような存在になっているのだ。