年齢の問題で働きたくても働けない

どこからか「炊き出しまわって楽な掃除して酒買うくらいなら働けよ」という声が聞こえてきそうである。たしかにそう言わざるを得ないようなホームレスがいたことも事実だ。しかし、働きたくても働けないというケースがあるのもまた事実である。

ホームレスがいきなり一般企業に就職するというのは無理な話かもしれない。大体は土木や解体などの日雇い労働、飯場労働に就くことが多く、実際にそういった仕事をこなしながら路上で暮らしているホームレスもいた。しかし、ホームレスの多くは高齢者である。上野駅前に暮らしていた60代前半のホームレス(昨年8月に病で逝去)は話した。

「肉体労働ってのは60歳を超えると、働く気があったとしてもなかなか雇ってくれないんだ。年寄りはやっぱりけがしやすいだろ。大けがでもされたら現場は止まるし、評判も悪くなる。だから年寄りは雇ってくれないよ。逆に年寄りを雇うような小さな会社に入ってみろ。どこに連れて行かれるかわからないんだぞ」

上野や新宿で手配師(労働者を建設会社などにあっせんする人たち)をしている男も、「大手の会社になるほど60歳以上の労働者は雇ってくれない」と口をそろえた。

住民票を失っているホームレスもいる。実態調査や家族からの申し出などによりその住所に本人が住んでいないことが確認されると、市区町村の権限で住民票は削除することができる。こうなるとやはり日雇い労働か飯場労働くらいしか選択肢がなくなり、年齢の問題から働きたくても働けないという人が出てきてしまうのだ。

新宿から海浜幕張まで、家電量販店などをひたすら回る

そんな働きたくても働けないホームレスたちに人気の仕事が2つある。1つは「並び」と呼ばれる仕事だ。パチンコ店の抽選に並ぶ仕事、中国人の爆買いの手伝いで家電量販店に並ぶ仕事など種類はいくつかあるが、私はポケモンカードの転売ヤーから並びの仕事をもらった。

夜になると新宿西口地下広場に現れる転売ヤーの「フジモト」という男と私は口約束をし、翌日の早朝、待ち合わせ場所に向かうとそこには14人のホームレスが集まっていた。フジモトの付き添いのもと都内の家電量販店などを回り、指定されたポケモンカードを支給された現ナマ1万5000円で買えるだけ買う。その領収書をフジモトに渡すと1枚あたり1000円で換金してくれるのだ。

転売ヤーの藤本から渡された商品のメモ
転売ヤーのフジモトから渡された商品のメモ(筆者撮影)

フジモトはおそらく転売グループの下っ端であり、ポケモンカードのこともよくわかっていない。彼に渡されたメモは字が汚すぎて読むことができず、本人も商品名を正確に把握していないような書き方であった。一緒に列に並んでいた70代のホームレスに聞くと、「シャイニースターV、イーブイヒーローズ、蒼空ストリームだよ」と自慢気に教えてくれた。

ポケモンカードの買い付けは新宿で始まり、終わりは海浜幕張駅であった。フジモトから給料をもらったホームレスたちは、その場で駅にあるコンビニで酒とつまみを買い、ホームで酒盛りを始めた。もちろんポケモンカード以外にも「ニンテンドースイッチ」などのゲーム類、「シュプリーム」などのブランド品の並びの仕事も回ってくる。時期にもよるが並びの仕事は1回5000円ほどで、月に3回ほどは就くことができるという。

転売ヤーの藤本と一緒にポケモンカードを買い回るホームレスたち
筆者撮影
転売ヤーのフジモトと一緒にポケモンカードを買い回るホームレスたち