かなりひどいアジア人差別がベースのウクライナ報道

ただ、少し異なる見方・考え方を探ることにも意味があるはずだ。そうした意図もあり、先日、私のユーチューブ番組「和田秀樹チャンネル」にイスラム学者の中田考氏(同志社大学元教授=イスラム法学・神学)をゲストに招いたのだが、こちらの気づかない視点が与えられて有意義だった。

画像=ユーチューブ番組「和田秀樹チャンネル」より
【ゲスト:中田考先生】ウクライナ情勢を宗教の歴史で紐解く(前編)

ひとつは、今回のウクライナ報道が、実は、かなりひどいアジア人差別がベースになっている可能性があるという指摘だ。

ロシアはチェチェン紛争(ロシアからの分離独立を目指すチェチェン共和国と1994年から2度にわたって戦われた民族紛争)のときは、今のウクライナ攻撃の比でない市民無差別攻撃を行い、20万人の民間人が殺害されたとされる。人口100万人前後の国だから5人に1人が殺されたことになる。

それに対して、当時の欧米各国の制裁は現在のウクライナ戦争に対する制裁と比べたら小さいものだったし、残虐な映像も今日ほど流されなかったのは確かだ。チェチェン人がかわいそうだとか義捐金を送ろうなどという声は日本でもほとんど聞こえなかった。

実際、欧米のメディアがウクライナの現地から中継をするときに、リポーターは「ここは、シリアやパレスチナでないのです。ヨーロッパの中でこのような惨事が起こっているのです」などと平気で言うらしい。

彼らの発想では、シリアやパレスチナで一般市民が爆撃されても問題ないが、ヨーロッパではダメだということなのだろうか。単純にこれまで戦争や紛争が起こらなかった地域で人々が死んでいるという驚きを伝えたかったのかもしれないが、シリアやパレスチナといったアジア系を蔑んでいると受け取られてもしかたない。