ロシアをイスラエルが支え経済制裁は実質的に無効に
さて、それ以上に、今回、私が気づかなかったのはイスラエルの存在だ。
この国は、世界の中で唯一何をやっても制裁されない不思議な国だ。1981年に武力で一方的にゴラン高原を併合すると宣言し、その後、実質支配を続けている。これに対して、国連はほぼ全会一致で撤退を要求する決議を出したが、制裁は実質的に受けていない。
核開発も公然の事実となっている。もちろん、制裁を受けたことはない。世界で一番暴虐無人に振る舞えるのは、この国だ。そんな意見も一部にはある。
ウクライナのゼレンスキー大統領は本人が認めているようにユダヤ系であり、イスラエルに逃げれば身の安全が保証されるとの説もある。
いっぽうで、ロシア系のユダヤ人が多数いるイスラエルは、ソ連時代からロシアとは仲がいい。確かに国連決議ではロシア非難に賛成票を投じたが、国連決議が無意味なのを一番よく知っているのはイスラエルだ。表向きに欧米の味方の顔をしているだけかもしれない。
中田氏の読みでは、ロシアが今後さらに本格的に経済制裁を受けた時に支えるのはイスラエルではないかという。
国際決済や石油や天然ガスの購買について、中国が助けるという説を唱える人が多い。中国だって、そういうものはのどから手が出るほど欲しいだろうが、現時点では、ロシアと比べ物にならないくらい国際社会に食い込んでいる中国が、自国株の暴落を食らってまで、ロシアの支援をするかは不透明である。
しかし、イスラエルは、仮にロシアの国際決済や原油や天然ガスの輸出入をイスラエルが裏で支えたとしても、まず国際的な制裁を受けるとは思えない。つまり、場合によっては莫大な利益をあげることができる。
中田氏の読みが正しければ、ロシアの経済制裁は実質的に無効になり、それだけこの戦争が長引くことになる。アメリカとの関係もあるイスラエルが本当にロシアを裏で支えるかはわからないが、複雑な各国の関係や思惑を読み解く上で一考の余地はある。