おとなしくて従順な若者が多いという大誤解
そこで大事になるのが、やはり本音で話すということです。
共通の問題意識を前提にして、お互いが「こうしたい」「こうありたい」と正直に、忌憚なくぶつけ合うことが必要です。建て前や格好をつけて話をしても相手に響かないし、つながることはできません。
私が若い頃は、時代の流れがある意味見えやすかったと言えるでしょう。だから学生同士、共通の問題意識を持ち、共通の方向性が持ちやすかったわけです。
学生運動が盛り上がったのも、そんな時代背景があったからだと思います。それに比べると、いまの学生や若い人はおとなしくて従順な人が多いといいます。
確かに、いまは昔より時代が見えにくいでしょう。それが資本主義であれ、米国の帝国主義であれ、国家という権力、体制であれ、仮想敵がわかりやすかった昔とは違います。いま、世の中は複雑化して、すべてが見えにくくなっているんですね。
でも、ベンチャー企業の取材を続けてよくわかったのは、彼らは非常に時代意識が明確で、自分たちが何を目指し、何を克服すべきかをよくわかっているということです。
だから彼らは大企業などの既存の組織やシステムに頼らず、独自の道を進んでいるわけです。その熱量は、むしろ学生運動に熱狂していた当時の学生よりもはるかに高いと思います。
なぜなら、彼らにはポーズがありません。ビジネスとして生き残るために真剣に戦っているのです。
かつての学生運動には、多分に時代に流され、ポーズをとっていた人も多かった。ベンチャーに飛び込む若者には、そんな中途半端な人間は一人としていません。
ですから、私は困難な時代だけれども、いまの時代にも若者にもまったく絶望はしていません。むしろ、逆です。新しい時代の黎明がすぐそこに来ています。大いなる希望を抱いているんですね。
一流の人と若者を結びつける
この歳までジャーナリストとして生きてきた私は、幸い各分野に親しくさせてもらっている人がたくさんいます。
若い人とそういう人たちを結びつけるハブになれたら、これほど嬉しいことはありません。そしてそこから様々な化学反応が生まれて、新しい時代が生まれてくるでしょう。その様子をこの目で確かめたいというのが、私の大きな夢になっています。
政治学者の三浦瑠麗さんは、私の本の帯で、私の「圧倒的なプラス思考が好きだ」と言ってくれました。とてもありがたい言葉です。私は自分がそれほどプラス思考であると自覚したことはないけれど、結果としてそうなっていると感じます。
どんなに暗い世の中であっても、一人ひとりが前向きに希望を持ち、描いたビジョンを他者と共有する。それによって、時代はいかようにも変わっていくと思います。
その意味で、彼女の言う「プラス思考」はその通りです。
そして、それを実現するのがコミュニケーションなんですね。互いが理解し合い、共通の目標を立ててそれに向かって力を合わせる。その認識さえ同じであれば、私は立場や年齢を超えて一緒になることができる。私はじつに楽観的に考えています。
三浦さんは、同時に私のことを、「いつでも誰にとっても同時代人だ」と評してくれました。たしかに私は、その時々の「時代」といかにコミットするかを、つねに模索してきたように思います。
時代を代表する人々と関わり、コミュニケートする中で、自ずと同時代を生きることになります。これまでの人生を振り返っても、結果としてそうなっていると感じます。