デジタル化する社会でコンビニに求められるもの

【田中】2022年1月20日にアマゾンが、アパレルのリアル店舗であるAmazon Styleを年内にもアメリカでオープンすると発表しました。リアル店舗としてのAmazon Booksは6年前の2015年11月に開店していますが、私としては待ちに待ったAmazon Styleのオープンです。リアル店舗は商業の原則として店舗の面積に応じて、どれくらいの商圏にチャレンジできるかが決まっています。

一方でAmazon StyleのようにOMO(Online Merges with Offline)、オンラインとオフラインの完全融合にはさまざまな可能性があります。店舗としては面積に限りがありますが、デジタルには無限の可能性があります。もともとのご出身である繊維畑、アパレル、ファッションにおいて、デジタルの領域も含めると、コンビニにどれくらいの可能性があるとお考えですか?

【細見】可能性のある分野というのがどこなのかにもよると思います。消費者と業界がコンビニに求める役割は何なのか。例えばコンビニは食品をたくさん売っていますが、食品業界の方がコンビニに求めるものは何か? その役割を果たした上でデジタルにつながっていく必要があると思います。昨年から我々がコンビニ、リアルリテールはこれからメディアになると言っているのは、そういったメッセージを含んでいるとお考えいただけたらと思います。

ファミリーマート代表取締役社長・細見研介氏

実際に見られる、触れられる、食べられることの強み

【田中】マーケティングで言うセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングにおける、ポジショニングの二つの基軸で言うと、コンビニは、消費者を主語にして考えると昔も今も10年後もおそらく、便利でおいしいものを食べたいという、「便利×おいしい」が最も重要な基軸だったと思います。

「便利×おいしい」をいかにリアルとデジタルでアップデートするかが、これまでのゲームルールでした。しかしコロナ禍で人々の考え方が変わり、さらにUber Eatsなどが登場してその定義も変わり、見直しが求められているのがコンビニだと思います。

おそらく「便利」は、何年たっても必要だと思います。一方で「おいしい」にはこれからもいろいろな基軸が求められますし、打ち出せると思います。「便利×おいしい」以外で重要になる基軸はあるのでしょうか?

【細見】私たちのコーポレートメッセージは「あなたと、コンビに、ファミリーマート」です。最近の消費者、生活者はスマホと切っても切れない生活になっている。その結果、どういうことが起こっているのか。情報過多になっていないか? 情報を選別したり、確認する場がなかなかないわけです。

コンビニはリアルで200メートル、300メートルの圏内にあります。そこで触れる、見られる、食べられることは極めて大事だと思います。アマゾンがリアルの書店や、アパレルの店舗を出店することの大きな意味は「触ってください、感じてください」ということだと思います。6Gの世界になると、感じることもデジタルでできるようになるかもしれませんが、そこまでには時間があるということで、コンビニは情報を集約していく一つのハブになるのではないかと思っています。