タダより怖いものはない

ところで、したたかなのは旅行会社だけではない。参加者の中に、宝石店に場慣れした様子の年輩女性がいた。聞けばその女性は毎月のようにひとりでいろいろとミステリアスな会社の無料ツアーをハシゴしているという。

梅村達『派遣添乗員ヘトヘト日記』(三五館シンシャ)

常連に言わせれば、「宝石屋さえクリアすれば、あとはこっちのもの。タダで旅行ができて、お昼ごはんも食べられるんだもの、サイコーよ」とのこと。

そういう心臓の持ち主ならば、この種のツアーとて問題はない。しかし気の弱い人は注意が必要である。ピシャリと断ることができず、集中攻撃を浴びて、あえなく高価な宝石を購入というケースも、時としてある。タダほど恐いものはない、という結果になってしまう。

なお近頃では、宝石店などでの露骨な販売をカットし、かわりに土産物店の立ち寄りを多くしているツアーが増えているようだ。また大手の旅行会社の半分ほどの格安料金で、特別招待旅行と銘打ったツアーもあるやに聞く。

手を変え品を変え、あの手この手で参加者を呼びこもうとしているわけだ。カラクリは基本的に同じである。もし参加するようなことがあるならば、ご用心を。

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