高い剛性を誇る車体、カーブも滑らかに走り抜ける

今回試乗したのは、ハイブリッドモデルでFFの上級グレード「ハイブリッドX」。受注初期では一番人気だという。千葉県にある大型商用施設をベースに、駅周辺、住宅街、幹線道路、高速道路とバラエティに富んだコースを選んだ。

かつて筆者は別業界で営業職を経験していたのだが、その相棒が2代目アルトだった。非力ながらも軽量な車体と低速寄りのギヤ比によって割と活発に走ったが、速度を少し上げると安定感に欠け、カーブではやや不安定になりブレーキも心許なかった。

当然ながら、2代目からすれば新型は立派な“乗用車”だ。最新の衝突安全ボディで構成され、高い剛性を誇る車体は高速道路の継ぎ目もサラリといなし、カーブでもじんわりゆっくり車体を傾け滑らかに走り抜ける。

これはサスペンションの改良に加え、タイヤサイズが14インチへ1インチ大径化され、同時に偏平化されたことが大きな要因だ。ブレーキサイズも大きくなり、より安定した制動力が得られる。

さらに新型アルトで良かった点はマイルドハイブリッドシステムを得たことだ。これにより発進時から40km/hあたりまでの街中で多用する加速シーンではグンと力強くなり、走行性能に大きなゆとりが生まれた。とくに青信号からの発進時には、普通の運転操作で交通の流れをスッとリードできるから心理的な不安もない。

ここでの立役者はISGだ。モーター出力は2.6PSと僅かだが、加速力に直結するトルク値は4.1kgf・mにも及ぶ。エンジン単体のトルク値が5.9kgf・mだから、その70%近い値がモーターから得られ、しかも通電直後の100回転で最大トルクが加わるため力強い加速を体感しやすい。

サイドウインドの形が変わり、左右の目視がしやすくなった

肝心の燃費性能も優秀だった。90分間の試乗における燃費数値は31.1km/l。信号が少なく渋滞もないなど走行条件が良かった5km程度の区間燃費では37.4km/lを記録した。

筆者撮影
5km程度の区間燃費では、37.4km/lを記録した

室内も広い。ボディのルーフ部分をグッと張り出させたことで室内高(従来比+45mm)や室内幅(同25mm)にゆとりが生まれた。また、空間が拡がったことで万が一の衝突時、乗員が車内に強く接触する確率も減少し安全性も高まった。

個人的に好印象を抱いた点は、前席のサイドウインドがスクエア形状になったことだ。弧を描いていた従来型と比べて実質的な窓面積が増え、左右の目視による安全確認が格段にしやすくなった。

死角も減ったから狭い場所での取り回しも良好だ。また、14インチ化されたが最小回転半径は4.4mと+0.2mの拡大に留めた。車両重量は610kg→680kg(最軽量グレードでの比較)と、新型は装備を充実させ70kg重くなったが、アルトの主戦場であるWLTC-L(市街地モード)値での燃費数値はエネチャージ効果も手伝い新型が1.5km/l(約7%)も上回っている。