【村沢】中国の小鵬汽車は世界のEVメーカーランキングの20位以内に入っている、注目のEVベンチャーですね。

【井上】19年に現地で取材しました。かなりテスラを意識していて、今後伸びそうな印象を受けました。

【村沢】同じ中国のNIOも注目のEVベンチャーです。いまのところ月別ランキングには入ったり入らなかったりですが、今後上昇してくると思います。

EVは都市よりも地方で売れる

【村沢】私の記事には「EVは所詮ヨーロッパ、アメリカ、中国でしか売れない。新興国では日本車が強い」というコメントも寄せられます。しかし、むしろ新興国のほうがEV化を受け入れやすいとという面もあります。

新興国の中にはEV産業を育成しようとする国が増えています。ベトナムではビンファーストというEV企業があらわれていますし、おそらくインドも今後「EV大国」となってくるでしょう。EVは構造の複雑な内燃機関がないため、新興国でも取り組みやすいのです。

経済ジャーナリストの井上久男さん

【井上】インドネシアのジョコ大統領はEVをやりたがっているそうです。タイなんかでも同じような傾向がありますね。

【村沢】新興国にガソリンスタンド網を整備するのは大変なんですよ。輸送だって手間がかかる。でもEV用の充電ステーションなら、電線さえ通っていれば簡単に整備できます。1カ所あたりの費用もせいぜい数百万円で済みますから。

【井上】日本でもガソリンスタンドの経営難、後継者難が叫ばれています。EV化は、自宅で充電できる点でもメリットが大きいように思いますね。

いま日本のEV販売は、実は岐阜県など、軽自動車が売れている地域で好調です。どうも、地方の過疎化でガソリンスタンドが減っていることが影響しているようなんです。

【村沢】それは紛れもない事実だと思いますね。地方だと、最寄りのガソリンスタンドまで十数キロ、という環境もめずらしくありません。「EVは都市でしか使えない」といったイメージもあると思いますが、EVはむしろ地方で売れるような気がします。

経営トップは情報を選別する目を持つべき

【村沢】日本の言論環境には改善の余地があると思います。福島第1原発の事故当時、私は東京大学の特任教授でしたが、事故前には東電から研究費を提供されていた一部の研究者が、原発の安全性にお墨付きを与えている姿を目にしました。

同様に、日本の一部のモータージャーナリストは、EVについて正確な情報発信をしていません。

元東大特任教授の村沢義久さん

【井上】「EVは補助金がなければ成り立たない商売だ」とか、そういう主張をするモータージャーナリストもまだまだいますね。ただ、EVを買う人は、これからどんどん増えていくと思います。

【村沢】より深刻な問題は経営者の姿勢です。仮に、御用モータージャーナリストが、疑わしいニュースを発信していたとしても、賢明な経営者なら、そのような情報を信用すべきではありません。

メーカーのトップは、情報を選別する目を持つべきです。