それよりも、顧客の離反の原因を理解するもっと優れた能力を開発することに資源を投じるべきだ。そのような能力は、コスト効率よく離反を減らすことを可能にし、成熟した市場においても成長を促進してくれる。
以下に紹介する効果的な3段階アプローチは、顧客経験と顧客認知と顧客行動の関係を理解するために、顧客満足度データを新たな目で眺めるところからスタートする。
[1] 自己申告と離反の関連を理解する
自己申告の満足度調査の欠点は2つある。1つは、不満を持った顧客はすぐに離れていくのでサンプルに実際より少人数しか含まれないこと、もう1つは、一般的な格付け調査やランキング調査は、たいして意味のない結果しか与えてくれないことだ(たとえば、信頼性が大切だとは誰もが言うが、価格に満足しているとは誰も言わない)。一例を挙げると、私の会社である、マーサー・マネジメント・コンサルティングがコンサルティング業務を請け負った先ほどのヨーロッパのインターネット・プロバイダーは、信頼性と価格の満足度スコアがどちらも慢性的に低いことに注目して、より低い価格でのサービスの提供とインフラへの多額の投資が唯一の解決策だという結論に達していた。しかしわれわれは、定期的な顧客満足度追跡調査のデータを顧客解約データベースと突き合わせることによって、満足度についてのどのような回答が実際に個別ベースでの離反行動につながったかを突き止めた。この事例では、基本サービス(具体的にはそのスピードと信頼性)についての「満足していない」という回答は、その後の離反とあまり関係がなかった。しかし、より高度な2つの機能──ナビゲーションとインターフェース、およびコンテンツ──は、明らかに離反につながっていた。
[2] 実際のパフォーマンスと離反の関連を数量化する
前の例では、顧客経験の他の構成要素と比較した場合のサービスのパフォーマンスの実際の影響は不明だった。そのためわれわれは、次のステップ──パフォーマンスのさまざまな要素が、それぞれどの程度、離反行動の直接的な要因になるかを明確にすること──に、それまで以上に熱心に取り組んだ。われわれは顧客レベルのデータと解約データを突き合わせることによって、パフォーマンスと離反の直接的な関連を明確にすることができた。決定的に重要なデータは、たいてい組織のさまざまな部署にすでに存在している。課題は、それをどのように解釈して、関連のある情報を抽出するかである。
[3] パフォーマンスの問題点の根本原因を突き止める
離反に最も大きな影響を及ぼす要素を特定し、数量化することは、サービスのパフォーマンスの問題点を突き止めて、それに対処することができて、初めて価値を持つ。この場合もやはり、潜在的なパフォーマンス・ドライバー(要因)を顧客レベルで分析することで、企業は離反の根本原因を特定し、現実的な改善案がパフォーマンスに及ぼす影響と、離反に及ぼす影響を数量化できる。そのうえで、マネジャーは影響の大きい改善策にただちに力を集中すべきである。