「EV中心」に移行するにはハードルがたくさんある

2021年はEVが救世主であるかのような、そんなバラ色の情報が錯綜した。ただ、残念ながらその解釈には事実誤認が含まれている。既存のエンジン車は悪で、新たなEVこそ正義とするシナリオは道理が通らなかったのだ。

ここは白黒、ゼロイチの世界ではない。内燃機関と電動化は手と手を取り合い、国と地域を鑑みた普及を目指してこそ、真のカーボンニュートラル化へと近づける。

一例はトヨタ自動車が2021年12月に行った「バッテリーEV戦略に関する説明会」が示した。ここでは、水素エンジンや代替燃料もカーボンニュートラル化への手段であることが世界に向けて発信されている。

EVを含めた電動化によって利用者には様々なメリットがもたらされる。たとえばEVの滑らかな走りは快適で、乗れば誰もが笑みをこぼす。しかし、世界中の自動車メーカーがEVを中心とした生産体制に移るには越えるべきハードルがいくつも存在する。

要となる二次バッテリーでは、産出能力に限りのあるコバルトの確保を単純計算で現状の100倍に、20年先には1000倍以上にそれぞれ高める必要があるとの声がある。しかし、コバルトを含むレアメタル(ニッケルやリチウムなど)を必要とするだけタイムリーに産出し続けることは物理的に不可能だ。

また、コロナ禍がもたらした部材不足として半導体が話題だが、それ以外にも銅を多用するワイヤーハーネスや、樹脂や天然由来の素材を使った部材においても不足が続く。

カーボンニュートラル化は「グラデーション」で実現する

だからといって筆者は、「EV社会は実現しない、目指すべきではない」とは思わない。冒頭に述べたようにEVを含めた電動化は、部分的な環境負荷の低減効果が期待できるし、カーボンニュートラル化された電力の同時同量がスムースに行える北欧(例/水力発電に恵まれたノルウェー)では、この先も引き続きEVを高い比率で普及させればいい。

そういった理屈だから、その逆もある。つまり車両の電動化だけを急がずに、まずはインフラ整備を増強すべき国と地域も存在するのだ。

そもそも電動化社会とは、温室効果ガス削減やカーボンニュートラル化が目的であって、世界をEV一色にすることではない。この先もHV(ハイブリッド車)やPHV(プラグインハイブリッド車)は電動化社会に貢献し続ける。

こうして徐々に明らかになり、世界へと浸透する事実から、内燃機関と電動化の二者択一論から始まったカーボンニュートラル化は、じつは両者が混ざり合うグラデーションによって実現するのではないか。ボッシュの研究車両であるCVT4EVに試乗しながら、そんな思いを抱いた。

写真=筆者提供
CVT4EVと筆者。取材は栃木県那須塩原市にあるボッシュの試験場で行われた
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