もともと、「喩え」を上手く使って話したり書いたりできる人を知性的だと思っていて、自分も教える立場として知的に見られたい、そんな思いから「喩え」を多用していたのです。
しかし、生徒は正直なもので、私がいい加減に使っていた「喩え」に対して不満を抱いたのです。
本来、「喩え」とは、相手の理解を促すために用いる説明の技法です。相手にわかってもらうことを目的として使います。その一方で、わかりにくい喩えというのは、かえって相手を混乱させてしまうことにもつながります。
冒頭の「ラフレシア」の喩えがわかりやすいでしょう。「ラフレシア」というのは世界最大の花で、5日間ほどしか咲かないため「幻の花」とも呼ばれています。また、悪臭を放つ寄生植物としても有名です。
ただ、花好きの人はともかく、ラフレシアを知っている人はそこまで多くない可能性があります。
そのため、「ある仕事が、これまでにないほど大きな案件でなかなかもらえない依頼だけども、その分、リスクの高い危険な案件である」ということを伝えたくて、「この仕事って、ラフレシアだね」と言い表しても、相手を混乱させてしまう可能性が出てきてしまうわけです。
それでは、どのようにすれば、「喩え」を上手く用いた説明ができるのでしょうか。
喩えるときは「特徴」に注目
そもそも「喩える」とは、「説明したいものと似た特徴を持つものを、他のフィールドから借りてくること」です。
つまり、上手く喩えるためには、説明したい物事の特徴を正確に抽出することが重要です。
たとえば、化学の講義で硫酸と酢酸という酸の強さを比べるとき、「硫酸のほうが酢酸より圧倒的に強い」と言われても、どれだけ強さに差があるかイメージが湧かないかもしれません。
でも、「同じネコ科であるライオンとシャムネコくらい強さは違う」と加えるとイメージが湧きますよね。
これは「2者間の桁違いの強さ」という特徴を抽出して喩えたのです。
これを「ライオンとシャムネコ」ではなく、「トラとヒョウ」で喩えたら2つの強さの差が少しわかりにくくなってしまいます。「トラとヒョウ」からは「2者間の桁違いの強さ」という特徴を抽出できていないのです。
ここで、「喩え」を使って説明する際の、相手に正確に理解してもらいやすい説明の組み立てステップを紹介しましょう。