有名私大は次々と系属校・提携校を確保
証券会社はさらに踏み込んだ提案もした。
「難易度の面でつり合いのとれる高校が見つからなければ、どこか高校を買収して在校生を卒業させたうえでいったん廃校とし、看板を架け替えて新しい付属校として再スタートしてもいいでしょう」
格付けを取得した大学は、債券こそ発行していない(財務的に余裕があり、手元資金だけでも高校の買収くらいはできるのだろう)が、格付けの取得がひとつの刺激になったようだ。
早稲田大では2010年、佐賀県の県立高校跡地に「系属校」が開校し、大阪府にも系属校を置いた。青山学院大でも、系属校や「教育提携校」を設けるようになった。ミッション系の高校と提携して募集枠を設け、レベルの高い高校生を吸い上げているのだ。
高校を運営する学校法人との合併を選んだ大学もある。中央大学は2010年に横浜山手女子学園を附属校とし、男女共学化するとともに名称を中央大学附属横浜中学校・高等学校に改めた。上智大学を運営する上智学院も2016年、高校を運営する栄光学園、六甲学院、広島学院、泰星学院と合併した。上智学院が合併したのはいずれも、設立母体が上智大と同じイエズス会系の学校法人である。
エスカレーターが増える分、狭まる一般入試の門
受験生の目に附属校や系属校からエスカレーター式で進学していく生徒がうらやましく思えるのは、その分だけ一般入試での入学が狭き門になるように映るからだろう。
私立大学に続いて近年は国立大学法人にも格付けが広がり、東京大学や東北大学、九州大学、名古屋大学と岐阜大学を運営する東海国立大学機構などが取得済みだ。国から支給される運営交付金が先細りになるのが見えており、今後は地方の国立大学でも格付けの取得と債券発行による資金調達がさかんになる可能性がある。
地方では電力会社やガス会社、電鉄会社、地銀などが地元の国立大学に対して採用枠を設け、優秀な学生を採用してきたが、実力本位、競争本位が浸透するにつれ、そうした枠がなくなったという。地方の国立大学は調達した資金で看板学部をテコ入れし、少子化の中で埋没を避けなければならない。