「予算を消化できるのならやらない手はない」

大手広告代理店がここまで力を持つに至った背景には、「雪まつり」が歩んできた歴史がある。1950年に地元の中・高校生が6つの雪像を大通公園に設置したことをきっかけに始まった「雪まつり」は、陸上自衛隊が「雪中訓練」の一貫として実質無償で大雪像の制作を手掛けるようになった50年代半ばから全国的にも認知されるようになる。

さらに1972年の札幌冬季五輪のころから、大手広告代理店が企画・運営に携わるようになると一気にメジャー化する。本来であれば観光閑散期の2月の札幌に国内外から200万人以上の観光客が詰めかける一大イベントとなり、その経済効果は500億円ともいわれる。

「以降、札幌においては、広告代理店を中心とした『実行委員会方式』が完全に定着し、雪まつり以外にも、初夏のYOSAKOIソーラン祭りや真夏のさっぽろ大通ビアガーデン、秋のさっぽろオータムフェストなど大通公園を会場とするイベントはすべて同じ構図です。もはや広告代理店の協力なしに札幌市がこれらのイベントを単独で企画・運営することは不可能なので、すべて“丸投げする”しかない。

写真=iStock.com/CHENG FENG CHIANG
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また広告代理店ばかりでなく地元の観光産業やイベント関係者にとっても雪まつりがあるのとないのとでは、天国と地獄ほど違う。だからオンラインでも何でも、予算を消化できるのなら、やらない手はないわけです。さらにいえば、新聞やテレビなどのメディアも軒並み雪まつりの後援に名を連ねていますから、“税金のムダ遣いでは”という報道が出ることもありません」(同前)

昨年のオンライン開催では2億2060万円

なるほど。そのあたりの「大人の事情」については分かったが、一市民としてはやはり、その「オンライン雪まつり」に一体いくらかかるのかは気になるところだ。

札幌市が公開している事業評価調書によると、例年のフルスペックの雪まつりには、4億3000万円(2019年度)の事業費がかかっているが、昨年のオンライン開催のときには、実際にいくらかかったのだろうか。札幌市経済観光局観光推進課に電話してみた。

——昨年の「オンライン雪まつり」では、どれくらいの金額がかかったのでしょうか?

「令和2年度の収支決算が出ておりまして、決算額でいいますと、2億2060万円ですね。(フルスペックよりは)少しかかってないということになっていますね」