ブルー・オーシャンを狙って成功した焼肉ライク

そのため留守を預かる支配人の役目は、芸能人の代理オーナーとなり店舗における全権大使の権限にも勝る。

大きな事件(食中毒)などを起こした際は、最終的にオーナーが謝罪することになるが、その現場を取り仕切り対応、最後まで収拾するには支配人の力に追うこととなる。

ラーメン店の話になるが、オーナーが行く度に味が変わり、それに加えて知らないメニューを出していたことがあったそうだ。味が変わっていると指摘をすると、レシピ通りだといわれて信じてしまう。その結果は閉店になったのは明らかであろう。

採用面接では、履歴書や話す内容だけで信じてしまうのではなく、前にいたお店へ問い合わせをしたり、試食を作ってもらったり、業界関係者に照会することを行う。聞いていた話が違うことを避けるため、実際のアウトプット(事実)で、総合判断すべきなのだ。

さて、W・チャン・キム氏とレネ・モボルニュ氏の共著『ブルー・オーシャン戦略』(ランダムハウス講談社)で、レッド・オーシャン(血で血を洗う競争の激しい市場)とブルー・オーシャン(開発も価格競争も青く澄み渡る未開拓の市場)という考え方が提唱された。

焼肉店の特徴に一人客が少ないと指摘したが、そのブルー・オーシャン戦略で一人客をターゲット層に成功したのが「焼肉ライク」である。そのため、渋谷の地で客単価1万円以上の高級焼肉店は、ブルー・オーシャン戦略として検討する余地はある。

芸能人自らによる丁寧なサービスが打開策に

徹底的な高級路線の識別化をはかるのも手だ。例えば会員制で年会費や入場料を制度化したり、紹介制を導入するのもありだ。

黒服のイケメンスタッフや女性モデルが対応し、予約時間の前には1階の入口で待機、お出迎えそしてエレベーターで店舗まで案内。到着した際には、インカムでホール・スタッフに知らせて店頭でスタッフ全員でのごあいさつをおこなう。そしてソムリエを配置して、希少価値の高いワインや日本酒とのペアリング対応をはかる(飲食業の基本はお酒で儲けることだ)。

たとえ地方出張でお店に芸能人オーナーがいなくても、食事中に電話一本でごあいさつすることはできるであろう。もし番組出演やロケ中であれば、事前にタブレットでビデオ・メッセージを撮影し、予約客の名前を呼びながら感謝の言葉を述べる。

デザートをワゴンサービスで提供する方法もある。昔ながらのグラン・メゾン(高級フランス料理店)では、「クレープ・シュゼット」(クレープにオレンジ・ジュースとリキュールを注いでフランベして作る伝統的なデザート)などをメートル・ドテル(ヘッド・ウェイター)がお客さんの目の前で作り上げ提供している。

撮影協力=上北沢「レストラン ぷーれ」