焼肉店に料理人はいらない

1つ目は、焼肉は外食としてオーソドックスだからである。売れない時代からブレイク後まで、それこそ安価から高額なあらゆる焼肉を食べ慣れているからこそ、肥えた舌で味が把握できる安心感もあろう。

2つ目は、焼肉店は牛肉を焼く機器とテーブル、排気施設を配置する初期投資の装置産業(十分な装置や設備を整えればそれだけで一定の成果・収益が期待できると見られる産業)であり、最初に大金さえ持ち合わせていれば参入がしやすい。

焼肉店といえば、客がおのおの肉を自分で焼くスタイルになる。料理人を雇う必要もない。

昔は焼肉店といえば職人の世界だった。お店で部位ごとのブロックから大量の脂身や筋をはがしたり、そぎ落とす作業(業界用語では「掃除」と呼ばれている)、また隠し包丁を入れて焼いても縮まずに食べやすくする作業が必要であった。特に筋部分は長年の経験がものをいう。

しかし、今では、牛肉専門の業者にブランド、ランク、部位ごとにグラムを選んでビニールパッキングしたものをセット納入させてもらうことが可能になった。

また焼肉のタレさえも、各種の提案からオーダーメイドで選択できる。甘めか、フルーティか、またはサラッとしているものか、とろみがあるタイプかなどを肉との相性を考えながら試食会で複数を試せる。

極論をいれば、焼肉店のお店には包丁がまったくなくても構わないのだ。例えば、誰もが知っている有名焼肉チェーン店では、店舗に包丁を置いていなかった。レモンをカットするためのペティ・ナイフ(フルーツや野菜を切る専用ナイフ)だけしかなく、効率性を求めて営業しているところがあった。

日本の牛
写真=iStock.com/kukai
※写真はイメージです

客単価が高いのでラーメン店などより儲かる

さて、なぜ彼らは儲かると思い込むのか。それはスターである自分の「顔」が最大の広告宣伝効果となり、話題性もあり集客がたやすいと思っているからだ。

しかも焼肉店の客単価はラーメン店などと違い高価格帯で、複数の来店者(一人客は少なく、カップルや飲み仲間のグループ、家族連れなど)で回転するため、経営が安定すれば高収益を確保して儲け幅も広がるのだ。

そのため1号店の経営ノウハウが確立すれば、2号店や3号店など多店舗経営へと発展しやすい。フランチャイズ経営でも、その芸能人ブランドの権利を売りやすい。

なお芸能人本人がオーナー(出資)を務めるだけではなく、そのネームバリューによる各種プロデュースや名義貸しだけのイメージキャラクターなど、さまざまな関与の仕方がある。

それでも、なぜ失敗しがちなのであろうか。