成功者だからこその「根拠のない自信」が足枷に

1つ目に一旗揚げたお山の大将である芸能人は、お店の開業にあたり自分をヨイショする人ばかりを集めたがる。そして本人自身も、悪い話は聞こうとしない傾向がある。

そこには「個人事業主として自分一人の実力でここまで成し遂げたのだから、絶対に間違える判断はしないはず」という安易な自負が見え隠れする。いわゆる「根拠のない自信」が芽生えるのだ。芸能界で暗中模索のなかからうまくのし上がったのだから、飲食業界でも問題なく成功するという甘い考えだ。

筆者がそのような推測をする理由を述べよう。

まず、食べログのマーケティング・データを紹介する。同サイトは約1億1113万人(月間利用者数)、約15億5626万PV(月間PV数)の日本最大級のグルメWEBだ(2020年12月現在)。

投稿者が実際に使用した金額が反映されるので、生の声としてデータ活用がしやすい。

東京都の焼肉店でデータがあるのは、約4600店。そのうち食べログ点数上位1000店では、客単価は4000円台が一番多く、5000円台が次に多いことがわかる。

筆者作成
図表=筆者作成

立地の面でみると、牛宮城がオープンする予定の渋谷は上位1000店中、たった24店(2.4%)しか出現しない。客単価は4000円台が圧倒的だ。

筆者作成
図表=筆者作成

つまりこのデータからわかることは、渋谷自体が焼肉に適さない不毛の地であることがわかる。現に「牛宮城」がある店舗は、前も焼肉店であり閉店に追い込まれた物件だ。

耳が痛い話でも指摘するコンサルタントが仲間となっていれば、こうはならないはずではないか。このような客観的な事実すらも見ずに立地を決めているならば、「豚に真珠」「猫に小判」で何を言っても無駄であり、失敗確率を高めるだけだ。

最低でもテーブル1台あたり10万円の設備投資が必要

焼肉店は投入する資本が高額になる。それぞれのお客さまのいるテーブルごとに、肉を調理する機器と排煙機具を準備しなければいけないからだ。

まず焼肉店のテーブルには、大きく分けて「七輪、ガス・コンロ」と「無煙ロースター」の2つに分けられる。「七輪、ガス・コンロ」で焼くスタイルは、比較的、安価な焼肉店に多く見られる。排煙フードを上引きタイプにして、テーブルの真上に設置する。1台あたり、10万円からの価格帯となる。

一方、「無煙ロースター」は、機材1台あたり20万円からとなる。客単価が中~高価格帯のお店に多い。

排煙は下引きタイプであり、無煙ロースターが入ったテーブルを床に固定、床下のダクトと繋ぎ排煙する仕組みとなる。床面の下に余裕がなければ掘り下げるか、床を高台にする工事となる。その工事も1台あたり20万円からかかる。

それに店内全体のダクト工事もあり、その距離によりかかる費用が変わってくるが、約100万円からが相場だ。例えば店舗から屋上まで煙を逃がすダクトになると、1階上がることに約30万円ずつは追加でかかる。お客さまの見えない裏側では、多くの施設費用がかかっている。