「不幸沼」にズブズブ飲み込まれる女性を救った出会い系の男

20歳になった緑川さんは、馴染めない職場環境と先輩職員から受けたレイプに悩んだ末、自分自身も母親も世の中もどうにでもなれと思うように。むしゃくしゃした気分でインターネットの出会い系サイトに書き込むと、返信をくれた7歳年上の男性と会うようになった。

これでもかと言わんばかりの不幸の連鎖が続き、「不幸沼」にズブズブと飲み込まれそうな悪展開の中、この「出会い系の男性」との出会いが緑川さんの人生のターニングポイントとなった。男性は緑川さんが置かれた深刻な状況に寄り添い、緑川さんを「不幸沼」から救い出してくれる人物だったのだ。ふたりは1年後には同棲を開始する。

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同じ頃、緑川さんはハローワークの職業訓練に、専門学校に通って保育士の資格を取るコースがあることを知り、介護施設を退職。

だが、すべてがうまくいくわけではなかった。今度は専門学校での授業や実習などを通して、虐待の記憶に苦しめられ始める。例えば、授業で講師が心理的虐待の実例のひとつとして、「お前なんか産まなきゃ良かった」と口にした瞬間、緑川さんはフラッシュバックを起こしてパニックになってしまったのだ。保育士の資格は取りたいが、学ぶ過程で虐待の記憶が蘇ってしまう自分に、緑川さんは限界を感じ始めていた。

そんな頃、激しい腹痛が続き、病院を受診すると、卵巣出血を起こしていることがわかる。出血量が多く、なかなか出血が止まらないため手術となり、その後の検査で子宮内膜症が発覚。こちらも手術となり、1カ月ほどの入院を余儀なくされる。そのため、専門学校での単位が不足し、退学せざるを得なくなった。

23歳になった頃、緑川さんは妊娠。これをきっかけに入籍を決めた。

「結婚については悩みませんでした。夫の性格のおかげなのかもしれませんが、どんな育ちでも、どんな親でも受け入れてくれました。夫のご両親も、私の家族についてはあまり気にする人でなく、夫自身も、両親とあまり仲が良いわけではなかったので気が楽でした」

しかし、子どもを持つとなると、話は別だった。

「子どもがほしいという気持ちと、自分も虐待するのではないかという不安がありました。しかし夫が、『俺が一緒にいるから、もし虐待しそうになったら俺が止めるから大丈夫』と言ってくれたおかげで踏ん切りが付きました」