「ワークライフバランス」が転職先を選ぶ理由になる

ヤフーは、2014年より月5回まで働く場所を自由に選択できるリモートワーク制度「どこでもオフィス」を導入していましたが、2020年10月には新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴いこの回数制限を無くしました。それだけでなく、今年4月からは、居住地や交通費の制限を撤廃し、社員は日本全国どこからでも勤務できる上、好きな移動手段で通勤できるようになります。

このレベルのリモート勤務を可能とする企業はまだ多くはありませんが、社員一人一人がそれぞれの仕事とライフイベントを両立しながら、ワークライフバランスを大切にした働き方を実現しようという企業が増えてきていることは事実です。今後はこのようなことが会社を辞める理由、転職先を選ぶ理由になるのが普通になってくることを感じさせられる一例でした。

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プライベートに関する相談が増えている

新型コロナ感染症という未曾有の出来事と、緊急事態宣言等に伴うリモート勤務や自粛的生活の中、多くの人が、自分の価値観やワークライフバランスについて考え直す機会を得たことは想像に難くありません。そして、職場よりも家で過ごす時間が長くなった結果、家(プライベート)に関する理由で相談に来る人が従来よりも増えました。

前向きな方向性が見える人ばかりではなく、中には、不安や悩みが増えてしまうケースもありました。

高齢の母親が骨折、家事の負担割合が増えた

50代の女性社員Bさんは高齢の母親と二人で暮らしていました。都内のオフィスに片道2時間近くかけて通う娘のために、コロナ前はお母様が、家事(食事や掃除)のほとんどをしてくれていたとのことでした。

しかし、一昨年、母親が転倒骨折してしまいました。コロナ禍で緊急事態宣言下であったものの治療は大きな問題なく進みました。手術や入退院時だけでなく、その後のリハビリ通院においても、Bさんが在宅勤務だったため、いろいろな融通がきいてお母様をサポートできたことがとても幸いした、とうれしそうに話すBさんが印象的でした。

自分は在宅勤務だしお母様は骨折後ということで、Bさんは自分が家事を担う割合が多くなることも、何の疑問もなく過ごしていました。しかし、昨年11月、会社が社員たちに再び出社勤務を求めると、状況が変わりました。