旅くじの購入者の半数以上が新規顧客

経営企画部長の福島志幸氏は、「そもそもLCCですから」と、最初から格安であることを強調する。ピーチの航空券料金は空席連動型で、需要の少ない便を選べば東京(成田)―沖縄(那覇)が片道4000円台。また、月2回のセールのタイミングを選べば片道2000円台の航空券もあって、6000円分で往復できてしまう。

「実は『旅くじ』の利用者の半数以上が新規のお客様です。今回初めてピーチをご利用になったお客様は、1000円の割引以上に、『LCCってこんなに安いのか』とそもそもの安さに驚かれる。『旅くじ』をきっかけにLCCの魅力に気づいてもらえれば、旅行需要をもっと喚起できると考えています」(福島氏)

写真=プレジデントオンライン編集部撮影
職員が手作業でこしらえたカプセル。購入者は行き先を運試しで決められる。

つまり、緊急事態宣言の解除で激減した旅行需要が徐々に回復することを見越し、既存の利用者だけでなく、これまでLCCを利用してこなかったり、そもそも航空機を使った旅行をしてこなかった層を新たに取り込もうというのがピーチの狙いなのだ。

ちなみに「旅くじ」で付与されるピーチポイントは期間限定だ。引いた時期によって期限は異なるが、数カ月から最大半年に設定されている。オミクロン株の感染拡大が気になるところだが、すぐに出発しなくてもいいのはありがたい。

座席を居心地よくする企画は「ピーチとは合わない」

航空版ミステリーツアーと言ってもいいユニークな企画が、なぜ生まれたのか。

背景にあるのは新型コロナウイルスだ。コロナ禍による移動自粛で航空業界は壊滅的な打撃を受けたが、それはピーチも同じだ。2021年3月期(単独)は、旅客数が前期比7割減の約208万人に。営業収入は前期比69%減の219億円、最終損益は295億円の赤字で過去最大となった。

この苦境を乗り越えるため、消費者にコロナ禍でも旅行を楽しんでもらうためのアイデアを社内で出し合った。このとき福島氏が強調したのは、LCCの要とも言える「運賃」を大前提にしたうえでの「企画の面白さ」だった。

「例えば、コロナ禍で180席ある機体が90席しか埋まらなかったとき、スペースを有効活用して居心地を良くする企画があったとしても、『それはピーチがやることじゃない』と私は考えます。我々はLCCですから、運賃の魅力は死守しなければならない。そのうえでピーチらしい新しさや面白さのある企画をやろうと話しました」(福島氏)