最大の要因はコストの安さ
ノルウェーでEVが順調に普及している理由に、国民の環境意識の高さを指摘する識者は数多い。
しかし最大の要因は、そのコストがイニシャルとランニングの両面で安いことにあると言えるだろう。イニシャルコストとは購入に際してかかるコストを意味するが、一般にEVの車両単価はガソリン車やディーゼル車に比べると高くなる傾向がある。
しかしノルウェーEV協会のリポート(2020年9月)によると、VWの小型乗用車「ゴルフ」の場合、最終的な車両単価は従来の化石燃料型と電気自動車型(e-Golf)と比べて、むしろ安くなっている(図表2)。
政府が従来型の車両に対して炭素税や登録税など種々の税金が課す一方で、普及を後押ししたいEVには税金を課していないためだ。
ヨーロッパ各国はEVの普及のためにさまざまな減税措置や補助金の給付に努めているが、ノルウェー政府はEVの購入に際して税金を一切課さないことで、ユーザーに対して実質的なインセンティブを付与していることになる。
2021年の公的債務がGDPの42%と先進国でも有数の健全財政を誇るノルウェーだからこその大盤振る舞いと言えよう。
安価な電力と高価な化石燃料がEVを後押し
ランニングコストの面からも、電気代の安さがEV普及の追い風になっている。
ノルウェーは電力のほとんどを豊富な水力から得ている。発電コストが安い分、最終的な電力価格も安くなる。欧州連合統計局によると、2021年前半の家計の1kWh当たり電力負担額はドイツで税込31.9ユーロセントだったが、ノルウェーは同18.3ユーロセントだった。
他方で、世界でも有数の産油国であるにもかかわらず、ノルウェーの化石燃料の価格はヨーロッパでも有数の高さを誇る。
チェコで運営されているヨーロッパの道路情報サイト「tolls.eu」によると、2022年1月3日時点でノルウェーのガソリン価格は1リットル当たり1.94ユーロとドイツ(1.72ユーロ)やフランス(1.63ユーロ)を上回っている。