山道の走行では個性が強烈に発揮された

山道ではその個性が強烈に発揮された。市街地よりも車体に負荷のかかる山道での走行では、高められたボディ剛性との相乗効果もあり、GR86はタイヤのグリップ力を示す摩擦円限界を超えないかぎりドライバーの操作通りに車体が素早く反応する。まるで、手足と車体が一体になったかのようだ。

一方のBRZでは、ドライバーの操作に対し極めて短時間の瞬間的なタメがある。走行中の車体には連続する応力が加わり、車体はあらゆる方向に変化(≒しなり)を続けるが、BRZでは減速してステアリングを操舵し、それに車体が反応して……、という一連の動きが順々に規則正しく発生している。例えるなら、オリンピックのリレー選手が素早く確実にバトンを手渡ししていくような安定感がある。

サーキットでは反応が鋭くパキッとしたハンドリング性能のGR86が光ったが、市街地や山道などではBRZが見せた素の良さとしなやかさが好ましく感じられた。

筆者撮影
BRZ(6速AT)の運転席の様子

「スポーツカー=ガソリン消費量が多い」とは限らない

ところで、2021年はCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)を筆頭に、CO2をはじめとした温室効果ガスの削減、もしくはカーボンニュートラル化を筆頭にした環境対策が叫ばれていた。そうしたなか新たなスポーツカーを売るとはどういったことかとの指摘もある。

ごもっともな話だが、たとえば本稿のGR86/BRZでは試乗という限られた運転環境ながら、市街地からアップダウンの続く山道を80kmほど走行して13.2km/lを記録した。

さらにはマツダのオープンスポーツカー「ロードスター」などは得られる走行性能からすれば驚くほど燃費数値が高い。筆者は2015年から現行ロードスター(ソフトトップ仕様の1.5lガソリンエンジン)を愛車にしているが、生涯燃費数値は発売当時のカタログ値である17.2km/lと同等で、高速道路を淡々と走らせれば24km/l以上の数値を頻繁に記録する。

高速道路の燃費数値で24km/lといえば、たとえばシリーズ式ハイブリッド「e-POWER」を搭載し、2020-2022日本カー・オブ・ザ・イヤー受賞車である日産「ノート」や、軽自動車の実用燃費数値と遜色ない値だ。