「大切なのは、成功を継続すること」

戦後、力道山が廃墟から立ち上がろうとする日本国民のヒーローとなり、その遺伝子を継いだわたしが、プロレスというビジネスをさらに大きくした。わたしはプロレスをよりメジャーにするために必死に闘ってきた。

1980年代の新日本プロレスはテレビの視聴率もよく、会場はいつだって超満員だった。しかし、時代は移り変わっていく。いまはむかしと同じことをやっているだけでは、同じような人気を集めることはできないだろう。成功するのは大変なことだが、それを継続させていくのはさらに大変なことなのだ。

これが老舗の料理屋だったら、伝統の味を守ることに注力すればいいのかもしれない。だが、プロレスは違う。時代のニーズを読んで発想を働かせることが求められる。

プロレスに限らず、どんなビジネスにもいえることだが、成功を継続していくためには、守るべき伝統は守りつつ、変えていかなければいけないこともある。大事なのは、変化を恐れないこと。そして現状に満足することなく、向上心を持ち続けることだ。

勇気を持って踏み出せば、必ず道は開けてくる。

画像=YouTubeチャンネル「アントニオ猪木『最後の闘魂』」より

「人は歩みを止めたとき、挑戦をあきらめたときに年老いていく」

これも、引退セレモニーでわたしが口にしたセリフだ。

人生、いちども歩みを止めたことはない。それだけは自信を持っていえることだ。

2009年2月20日、東京・新宿にあった「アントニオ猪木酒場」に多くの人が集まり、盛大にわたしの66歳の誕生パーティーが開かれた。

この席上でわたしは、「今年のテーマは『老い剝ぎ』です」と発表した。

自らの「老い」を「剝ぐ」という意味で、いつまでも若々しくいたい。そんな思いを込めた冗談だったけど、あまりウケなかったな。

アントニオ猪木『最後の闘魂』(プレジデント社)

長年のレスラー生活で酷使してきたわたしの肉体はボロボロだ。70代を過ぎ、80代を間近に控えたいま、わたしはアミロイドーシスという難病と闘っている。

アミロイドーシスとは、肝臓でつくられるトランスサイレチンというたんぱく質が変性し、臓器にアミロイドという物質が沈着することで障害を引き起こす病気だ。このアミロイドが心臓に沈着したことで、息切れやむくみが強くなり、心不全により命にも別状があるものだ。今回ばかりは難敵だが、わたしは絶対に負けない。

現在の病状についてはYouTubeで随時配信している。衰弱した姿を見て驚いた人もいるようだが、それでもわたしは歩みを止めるつもりはない。

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