米国債がデフォルトしたら日本はバブル崩壊直後に戻る

ではここで、もし米国債のデフォルトが本当に起こったらどうなるか考えてみましょう。まずアメリカ国内では、国家公務員への給与が支払えなくなり、政府機関の一部は閉鎖、職員は自宅待機となるでしょう。さらに、社会保障も一部機能しなくなります。

でも本当に怖いのは、世界経済への影響です。おそらく米国債がデフォルトすれば、1929年の世界恐慌や2008年のリーマン・ショックに匹敵するほどの、グローバルな金融危機に発展してしまうでしょう。まず米国債は投げ売られ、利回りは急激に上がります。「米国債の利回りが急上昇する」なんて景気のいい話に聞こえますが、逆です。結論だけ言うと、国債利回りの上昇とは「国債価格の暴落」を意味します。そうなると当然、米国債の格付けも下がり、ますます売りが加速するでしょう。

ちなみに米国債の大量保有国は、1位が中国、2位が日本ですが、おそらく中国は、米国債がデフォルトしたら、一気に売りに出る気がします。なぜなら中国は、ゆくゆくは人民元をドルに代わる国際通貨に押し上げたがっていますから、短期的な損得を度外視してでも、米ドルの地位が揺らぐことをしてくる可能性があるからです。しかし日本は、アメリカとの関係性でがんじがらめになり、結局売れない。すると、どうなるか? 日本は、とてつもない額の「不良債権」を抱えることになります。

こうなると、誰もアメリカを買い支えなくなるため、国債安だけにとどまらず、ドル安・株安まで合わさった、いわゆる「トリプル安」が進行します。そしてドルが下がれば、次に来るのは「超円高」。これは日本の輸出産業に大きなダメージとなります。このように、多額の不良債権に超円高が重なれば、これはもうバブル崩壊直後の1990年代半ばと同じ。つまり日本は、あの深刻な不況期に逆戻りする可能性が高いのです。

アメリカのデフォルト危機はお祭り騒ぎ

と、いろいろ想像してみましたが、実際のところ、米国債がデフォルトする確率は「ほぼ0%」といっていいでしょう。そもそも米国債のデフォルト問題は、途上国や敗戦国でよくある「金がなくて返せません」ではなく、「議会に足止め食らって、余力はあるけど新規の借金ができません」ですから逆にいうと、議会の許可さえもらえれば回避できます。そして議会も、大統領とのかけ引きなどという、つまらない理由のために国家に壊滅的なダメージを与える気などないですし、そもそも共和党支持者は富裕層が多い。わざわざアメリカが損をするデフォルトを、本気で選択するはずがありません。

写真=iStock.com/Olivier Le Moal
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つまり米国債のデフォルト問題とは、腹にダイナマイトを巻きつけた犯人が、死ぬ気もないのに「近づくとスイッチを押すぞ!」と脅しているようなものです。一見緊迫した状況ですが、本気でスイッチを押す気など、これっぽっちもありません。だから皆さんも、新聞やネットニュースで「アメリカのデフォルト危機、迫る」という見出しを見かけたら、「おー、今年もやってるやってる」くらいに受け流しておけばいいのです。