結局、その人は別件の詐欺罪で3カ月間、刑務所に入った。実はこの話にはまだ後日談があるのです。
ある日、その彼から私に電話が来たのです。彼は、昨日、刑期を終えて刑務所から出てきたというのです。
「いま(伊藤忠商事本社の)地下にあるコーヒーショップにいるから、会えないかナ」
突然の訪問に戸惑いを隠せませんでしたが、一度会っておこうとエレベーターにのりました。コーヒーショップに座っている彼に向かって、
「刑務所、どうだった?」
と私は聞きました。
「いや、ひどい目にあったヨ、もう寒くて、寒くて……。ところでそれはそれとしてネ、こういう面白いビジネスがあるんだヨ」
と、切り出すわけです。そのとき、この粘り、この執念は本当にすごいと思った。
「ああ、このおっさんはいつか成功するだろうな」と私は感心しました。詐欺師から学ぶというのは変ですが、このバイタリティには脱帽です。