ワクチン接種後の抗体値は感染回復後よりも高い

ファイザー社のワクチンの場合、接種した人たちの平均中和抗体値は、新型コロナから回復した人たちのそれより約3.8倍高いことが明らかになっています。同じくモデルナ社のワクチンは、回復者の約3.4倍高い中和抗体が得られることがわかっています。

同様の結果は、私たちが行なった調査からも確認できました。NCGMでは熊本総合病院の島田信也先生と共同で、ファイザー社のワクチンを2回接種した225人を対象とした調査を行なっています。この225人の平均中和抗体値は、新型コロナから回復した40人の平均中和抗体値の約1.6倍でした。

ワクチン接種者のうち最も中和活性が高かった人と、回復者のうち最も中和活性が高かった人を比べると、前者が後者の約1.8倍です。こうした事実から、すでに新型コロナにかかって回復した人もワクチンを接種するメリットは十分にあると考えられます。ただし、ワクチンの効果を最大限に得るためには、接種まで一定の間隔を空けるべきケースがあります。

たとえば抗体カクテル療法を受けて回復した人の場合、接種まで90日以上の期間をおくことを、アメリカCDC(疾病予防管理センター)は推奨しています。すでに新型コロナに感染し、これからワクチンを打とうと考えているみなさんには、医師とよく相談したうえで接種の時期、回数を決めていただきたいと思います。

ワクチン接種後の発熱や痛みと“効き目”は関係あるのか

先ほど紹介した共同研究では、ファイザー社のワクチンについて他にもさまざまなことを調べていますので、以下、明らかになったことを紹介していきたいと思います。

まず「接種後の発熱」と中和活性との関係ですが、結論から言えば、相関はほとんどありません。たとえば40度の熱が出た人と、いわゆる平熱(36.8度前後)のままだった人を比べてみたとき、有意の差は認められなかったのです。男性と女性を比べてみても、やはり有意の差はありませんでした。

ワクチンを打ったあとに熱が出たからといって高い中和活性が得られるわけではないし、熱が出なかったからといって中和活性を得られないわけでもないのです。すでに述べたとおり、発熱は接種後1日目から3日目くらいに起きる副反応です。中和抗体が産生されるのは接種後10日前後です。両者にほぼ関係がないことは、このタイムラグからも容易におわかりいただけるのではないかと思います。

写真=iStock.com/recep-bg
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次に、接種後の「痛み」についての調査結果です。痛みが激しかった人と、ほとんど痛みが出なかった人では、ワクチンの効果に違いはあるのか。これも結論から言えば、相関はほとんどありません。

この共同研究では痛みの種類を15種類に分け、「どれくらい痛かったか」という程度を点数化して中和活性との関係を調べたのですが、有意の差は見られなかったのです。接種後に激しい痛みが出たからといって高い中和活性が得られるわけではないし、まったく痛みが出なかったからといって「ワクチンが効いていない」ということでもないわけです。