植樹に象徴される「バランス型」の経営スタイル

東海友和『イオンを創った男』(プレジデント社)

とにかくダイナミックでスピード感がすごかったですね。沖縄にアメリカのスーパーをそのままもってきたりして、カートが大きすぎて、おばあさんはカートの上まで手が届かないといったことなどもありましたが、まず行動。それから修正といったタイプでした。伊藤さんは持ってきたとしても、日本ナイズさせて小さくするだろうし、その前にまずアメリカから持ってこないでしょう。

そういう意味では岡田さんはバランス型ではないでしょうか。岡田さんの中庸性というか、芯は強いんだけど表に出さないで、まわりを薫陶していく。そういう点が『イオンを創った男』にはよく書かれていましたね。それに、岡田さんは植樹を熱心にされていて、自然が好きでしょ。自然に寄っている人って、永続性を求める。というのは、木を植えたら60年はかかりますから。レンジが長いのです。

イオンの強みは岡田卓也の人間的魅力

——出店戦略という点でも大きく違うんですね。

ジャスコさんの出店戦略は、地場のスーパーと合併することが多かったので、選定がきめ細かいように思います。何年後に地下鉄ができるとか、市街地開発が進むという情報を持っているような地元の企業と合併する。しかも、交渉は交渉で担当者がやっていても、上では岡田さんがニコニコしていると。そうすると、小異を捨てて大同につくといったことになるのではないでしょうか。

実態は厳しく、計算もあるでしょうけれど、雰囲気としてはまったく出さない。特に対自然に関しては、全開放ですから。それが岡田さんの人間的な魅力なのだと思います。しかも、岡田さんのご子息もしっかりされている。二代目というのは、組織志向のほうがいいんです。自分の個の能力よりもむしろオーガナイザー。岡田さんのご子息はそうじゃないかなと思います。弟の克也さんも政治家として素晴らしい人物ですし、やはり教育がよかったんじゃないかと思いますね。

そこはお姉さんの小嶋千鶴子さんの影響もあるのかもしれません。小売業界には、そういった傑出した女性が出てきますから。小嶋千鶴子さんもそうですし、成城石井さんにもいらっしゃいましたね。今の成城石井の原社長は、彼女の申し子で、彼がいなくなったら成城石井が崩れるんじゃないかというほどの逸材です。