「あの子は苦労したんだよ」の真意
——数年前に岡田名誉会長にお会いした際、大河原CEOのことをお伝えしたら、「ああ、あの子は苦労したんだよ」っておっしゃっていました。
1号店で、上手くいかなかったという印象が強かったんじゃないかな。3号店まで失敗していますからね。私はいつも負け組からのスタートなんです。それと、岡田さんは、私が三菱商事さんとアメリカの間で、苦労していたのを見ているから。
僕はアメリカサイドだったのですが、アメリカでは3年に1度は買収されるのです。そのたびに前の方針をひっくり返したがって、問題を起こす。それを、まあまあと抑えて、三菱商事さんとの間も取り持ったりしていたので。岡田さんは三菱商事さんから「あいつ(大河原)はいうことを聞かなくて大変だ」とかいろいろ聞いていらしたのでしょう。
特に三菱商事の諸橋さんと岡田さんは仲が良く、海外にも一緒に行かれていました。そこに私もよく同行させていただきました。諸橋さんには特にかわいがっていただいていたし、上智の後輩でもあったから、「お前も、来い」と。岡田さんにも「大河原くん、大河原くん」と、かわいがっていただきました。
植物を育てるように、長いスパンでモノを考える
——岡田会長はほとんどメディアには出ない方なのですが、唯一植樹事業の話のときには出てくださいました。
岡田さんが植樹に熱心だというのは、子供の頃の記憶にある四日市が公害でどんどん自然をやられて、心を痛めていたのではないかなと思いますね。それが潜在意識の中にあるから、熱心にされている。それで企業イメージをどうこうしようというよりも、本当になんとかしたいという強い思いなのだと思います。だから、ショッピングセンターをつくるときに木を伐採したりすると、必ずそれを戻そうとされています。
それを見習ってではないですが、私も一般社団法人ほのぼの運動協議会というのをつくって、東北の震災復興で忘れな草プロジェクトをさせていただいていますけど、やっぱりあそこまで長く続けるというのは素晴らしいですね。
イオンさんは海外でも、すごく息が長いんです。少々の赤字は気にしないという印象です。商社さんの社長の在任期間は長くて6年くらいです。6年で結論が出る投資というのはあまりないんですよ。その点、問屋のオーナー系の国分さんやサントリーさんは、長い視点でものを見る。サントリーさんはビールで何年も損をしていましたね。実際はサプリなどの業績が良いこともあり、少々の赤字は気にしない。だから、ウイスキーなど、10年20年30年と寝かせることができる。
オーナー系はやっぱりしぶといですね。しかも植物が好きだと、長いスパンでモノを考えるようになる。自分が死んでも種が落ちて伸びていけばいいというようなね。そうすると、目先はあまり関係なくなって、育てる先に興味が行くようになるのでしょう。
私自身も、岡田さん、中内さん、堤さん、伊藤さん、鈴木さんといった方々にいろいろな意味で教わって育てていただいた。それで1号店から1500店にまでできたから、今度はそれを他の人に伝えようと、今は自身の会社で後継者を育てている最中です。