中国当局の隠蔽体質が批判される当然の理由

李氏は、1回目と2回目の緊急通知の間にあたる30日午後5時43分頃、SNSの微信(ウィーチャット)のグループチャットに、華南海鮮市場での「7件のSARS症例確認」などの情報を投稿した。折しも緊急通知が流出し、武漢の公安当局はネット上での告発行為に神経をとがらせていた。

こうした状況もあり、当局は「事実でない情報を広めて社会秩序を乱した」として、1月3日に李氏を訓戒処分とした。確かに謎の肺炎はSARSではなかったが、こういう時ばかり反応が早い。「国家」監察委の報告書は、「武漢」当局の処分が「不適切だった」と認め、処分撤回と家族への謝罪につながった。

パンデミックの兆候を社会にいち早く知らせ、自らも犠牲になった功労者の名誉回復の報告書で、初動の詳細がようやく明らかになるとは……。あまりに遅く、迷走している。これがあるから、隠蔽体質が批判されるのだ。

これ以前の感染に関しては、香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポスト(電子版)が2020年3月13日、同紙が閲覧した政府資料に基づき、新型コロナの感染が「2019年11月17日までたどれる可能性がある」と報じている。記事によると、患者は湖北省在住の55歳の人物だという。一方で、流行の原点に位置する最初の患者「ペイシェント・ゼロ(0号患者)」はまだ確認されていないとも述べ、この人物以前に感染者がいた可能性も示唆した。

11月の感染者と「0号患者」の謎

これについて、中国CDCの高福(ガオフ―)所長は、3月27日付米科学誌サイエンス(電子版)のインタビューで、「11月時点でクラスターがすでに存在したという確たる証拠はない」と、幾分含みを持たせた表現で否定している。

香港紙は、患者が少なくとも11月17日までたどれる可能性を伝えたに過ぎず、高氏が言うような11月時点でのクラスターを明言してはいない。

記事はまた、この患者を含む男女9人が11月に謎の肺炎を発症していたと伝える一方、そのうち何人が武漢に在住していたかはわからないとしている。華南海鮮市場以前のクラスターがどこかに存在したとしてもおかしくはない。中国側もその辺は承知のうえで、当該の資料も実際に存在していて、情報の一人歩きを阻止しようと形だけ否定してみせたということなのかも知れない。

いずれにせよ、この手の話は後になるほど、解明・検証が進むほど、過去をさらにさかのぼった情報が出てくるものではあるが、時間をさかのぼるほど情報の確度もぼやけてくる。

新型コロナの起源をめぐる話は、トランプ米大統領の「チャイナ(チャイニーズ)・ウイルス」発言に中国や国連人権理事会の特別報告者が反発したように、多くの政治的、社会的分断を助長することにもつながりかねない。情報やその解釈に何らかの意図があって発信される場合もあり、慎重に扱う必要がある。