原因論は正しさを追求し、目的論は楽しさを追求する

どうして原因論と目的論で、こんなに違いが出るのでしょう。

ここはアドラー心理学というより、平本式アドラー心理学の解釈で解説します。

図表1を使って説明しましょう。

出典=平本あきお 前野隆司『幸せに生きる方法』(ワニ・プラス)より

リソースは、スキル、能力、知識、技術といった、その人が持っている資源です。

リソースフルは、心に余裕がある意識状態です。視点、視野が広く、自分の持つリソースを十分に活用できます。

アンリソースフルは、リソースフルの反対です。心に余裕がなく、アップアップな意識状態で、自分の持つリソースを十分に活用することができません。

この3つの観点から原因論、目的論を定義すると、こうなります。

原因論=リソース追求型の解決。技術や能力に注目して、正しさを追求する。
目的論=リソースフル追求型の解決。心の状態が良いか、楽しいか(=リソースを十分に活用できるか)を追求する。

目的論で成果が出せる秘密

オリンピックに出場するようなトップアスリートを合宿などで指導するケースを例にして比べてみましょう。

原因論のアスリート指導〈リソース追求型〉

技術を磨き、ミスを防ぐために原因論で徹底的にダメ出しをする。メダルが期待される選手には「絶対に金を獲るんだ。それ以外は意味がない」と鼓舞する。

一部の選手は「がんばるぞ」「やるぞ」となる一方で、「優勝できなかったらどうしよう」という不安からビクビク、オドオドしたアンリソースフルな状態になる選手も多数出てしまう。

目的論のアスリート指導〈リソースフル追求型〉

ミスを防ぐことよりも、選手の持っている良い部分や成長に意識を向ける目的論で関わる。メダルは関係なく、本人にとってベストなパフォーマンスが出るよう鼓舞する。

本人が持っているリソース(技術、能力)を最大限発揮できる、リソースフルな心の状態で試合に臨むことができる。また練習にも前向きに取り組めるので、リソースの向上も期待できる。

写真=iStock.com/lzf
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スポーツに限らず、人生のあらゆる場面において、リソース(技術、能力、知識)はもちろん大事です。しかし、そこだけを追求するあまり、心がリソースを十分に発揮できない状態(アンリソースフル)になってしまったら、意味がありません。原因論が上手くいかないケースの多くが、そのパターンに陥っていると言えるでしょう。

だから、リソースフルを追求する関わり方である、目的論で大きな成果が出せるのです。