大学進学は格差拡大を防ぐ最も重要な手段

——日米で中流層の没落や格差拡大に拍車がかかり、勤勉でさえあれば報われる時代は遠い昔の話になりました。親ガチャによる影響がますます大きくなる中、「格差大国」アメリカで、外れくじを引いた若者にとって最大の障害となっているものは何ですか。

最大の問題は教育(格差)です。すべての子供に、良質の早期幼児教育を受けられるような機会の均等を保障しなければなりません。豊かな家庭と貧しい家庭では、子供の大学進学率に大きな開きがあります。そして、多くの場合、男子のほうが女子より大学進学者がはるかに少ないのです。

かつては男子の進学率のほうが高かったのですが、逆転しました。男子は(貧しい家庭を中心に)溶接工やトラック運転手、配管工などになる人が多いのです。そうした仕事は報酬が高いため、大学に行って高額な学生ローンを抱えるよりいいと考えるのです。

でも、将来を見据えると、こうした傾向は好ましくありません。大学に行くべきであり、学位取得はとても大切なことです。というのも、親の教育レベルは、子供の教育レベルを予見する重要な指標になるからです。親が大学を出ていないと、子供も大学に行かない可能性が高くなります。

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——「格差は誕生から始まる」とあなたが言うように、格差は根深い問題です。デジタルによる分断など、親ガチャ格差が拡大する中、学校や政府、社会が取るべき対策は?

大学教育の重要性が高まる中、政府は、すべての若者にとって、すべての大学が開かれたものになるよう、尽力する必要があります。アメリカでは学費が高騰し、まったくそうなっていません。だからこそ、どの子も大学に行けるような施策が必要です。生まれや富の格差拡大を防ぐための手段として、大学進学は最も重要なものになりつつあります。

親は子と高校卒業後の進路について議論を重ねるべき

——親や教師は「誰もが、やれば成功できる」という建前論ではなく、親ガチャという現実を直視したうえで、どのように子供に接するべきですか。すべての子供が生まれに関係なく自分なりの幸せな人生を送れるような社会を目指し、親や学校がすべきことは?

どの子にも伸びしろがあります。すべての子供が、その子なりの潜在的な可能性をフルに発揮しうる未開拓分野を持って生まれてきます。教師や親は協力し合い、子供が各自の才能を最大限に引き出せるようにすべきです。それが「成功」なのです。

そして、ひとたび「成功」したら、あとは現実的になるべきです。子供が自分なりの未開拓分野を最大限に伸ばすことができたら、その子が経済や人生でどのようにそれを生かすことができるかを現実的に考えるべきです。

私たち親の仕事は、早期幼児教育への投資など、子供の成熟にとって大切なことを通して子供の未開拓分野をできる限り大きく花開かせることだと思っています。子供が高校を卒業し成熟したら、大学進学などについて、地に足が着いた議論を子供と交わすべきです。ひと筋縄ではいかない話し合いになったとしても、その子にはどのような進路がベストなのかについて、現実的な議論を重ねるべきです。