ニセコ投資は外国資本で完結しているのが現状

日本人富裕層に対してさえローン提供もできない。当然ながら、ニセコへの不動産投資の主流である海外富裕層のニーズをつかんでいる日本の銀行はゼロということだろう。

さらに、これは、富裕層など個人向け投資ローンの話だけではない。より規模の大きい外資系の大手開発会社や不動産会社向けローンでも、なかなか取り込むことはできていない。

ニセコでの、海外富裕層を中心とした高級コンドミニアムや別荘への不動産投資ニーズに、外国人の経営する地元の不動産会社を除けば、地元の不動産業者も金融機関もほとんど応えられていないのだ。

ニセコ町の分析においても、民間消費や観光業の生産額は町外に流出超過だという。町民所得や町の財政力指数も相対的に低く、観光客や投資の増加が地域の稼ぎに十分繫がっていないとしている。

なぜならば、外資系開発会社、海外不動産業者や海外プライベートバンクと海外富裕層との間で、独自のネットワークが排他的に形成され、地銀を含む日系企業はほとんど参入できていないのだ。それは言語や商慣行の問題もあり、信用力や取引実績なども関係している。

日本人富裕層が、ハワイなど海外不動産に投資する場合に、できれば日本語が通じる日本の企業か現地の日系業者に頼るのと同じことだろう。基本的には、担保価値以上の貸出をしない日本の銀行に対して、貸出先の事業計画や将来性、信用力そのものに対して評価し貸出をする海外の金融機関との差も影響している。

日本の銀行が関与しないから興隆したという皮肉

ニセコには、メガバンクの支店も出張所もなく、イオン銀行の提携ATMがたった1台あるだけだ。地銀も地元の北洋銀行の支店が一つあるのみである。この後に紹介する北海道銀行に至っては、支店ではなく出張所があるだけなのである。

地元の金融機関やメガバンクが動かないのであれば、ニセコらしく、東京支店を持つオーストラリア・ニュージーランド銀行(ANZ)など豪州の4大銀行や、プライベートバンキングでも定評があるHSBCなど、香港の大手銀行など外資系金融機関を誘致することも考えられよう。

もっとも、ポジティブに考えれば、日本の銀行によるファイナンス商品や関与がなかったからこそ、本物の富裕層による不動産投資や購入が中心となり、転売や投機だけを目的とした投資家層の参入を拒んだことで、ニセコの不動産における高い属性の確保や短期的な乱高下などを防ぎ、ブランド化にも寄与したともいえる。

地銀を含む日本の銀行が関わらなかったから、ニセコの興隆を招いたというのは、なんとも皮肉な結果ではあるが、事実として大切なポイントなのかもしれない。

いずれにせよ、顧客目線と収益目線を欠いたために、日本でもっとも成長するエリアで、まったくプレゼンスを示せない事態となっているのだ。