大手地銀による「研修施設」が次々と誕生している。それも、大ホールや宿泊室、食堂などを備えた大規模なものだ。金融アナリストの高橋克英さんは「業績不振のなかにある地銀が豪華な研修施設を新設する必要はあるのか。収益目線が足りないのではないか」という――。

※本稿は、高橋克英『地銀消滅』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

空の会議室
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大手地銀が加盟する「地銀協」の本部建て替え

地銀では今、本店・本部の新築ラッシュが起きている。そして、地銀業界の総本山である地銀協でも本部の建て替えの話が上がっているのだ。

正式には、地銀協は一般社団法人全国地方銀行協会という。設立は1947年、加盟行は現在62行。横浜銀行、千葉銀行、静岡銀行、福岡銀行といった各県を代表するいわゆる第一地銀、大手地銀といわれる銀行が加盟する由緒ある組織である。

地銀協では、行員向けの研修だけでなく、会員行の意見をとりまとめて提言をしたり、新たな金融商品や経済の動向についての調査・研究などをおこなったりしている。

地銀協の歴代会長は、かつては、大蔵省事務次官出身の横浜銀行頭取と日銀の理事出身の千葉銀行頭取が交互に会長を務めていた時代もあった。だが、いまは有力地銀5行(横浜、静岡、千葉、福岡、常陽)の生え抜きの頭取による1年ごとの輪番制となっており、現在の会長は、静岡銀行の柴田久頭取が務めている。

一部には、シンクタンクとしても業界圧力団体としても、そして銀行員の研修機関としても、中途半端な地銀協の存在意義を問う声もある。

三鷹の「合同研修所」の売却話も出ている

日本経済新聞(2021年5月31日)によると、地銀協は、老朽化した地方銀行会館(地銀会館)を建て替える検討に入ったという。

日銀本店から至近の距離にある地銀会館は、築60年で、月1回、第一地銀の頭取が一堂に会する定例会合などに使われている地銀協の本部だ。複数の関係者によると、協会側は補修したうえで継続使用、建て替え、売却の3案を理事会に諮ったという。

また、地銀協が持つ合同研修所の売却話も出ているという。

東京駅から三鷹駅までは、JR中央線快速で33分で到着する。三鷹といえば、かつては雑木林や畑が広がり、当地で暮らし1948年に入水自殺した太宰治の墓や記念碑、ゆかりの地跡が点在する場所でもある。雑多な駅南口界隈からタクシーに乗り、バスに自転車に歩行者が溢れる商店街を通り約10分でたどり着くのが、地方銀行研修所(合同研修所)だ。

広大な敷地に中庭を囲んで宿泊施設や独身寮もあり、まるでホテルのように立派である。地銀協によると、個別行で対応が難しい専門的な集合研修を、若手や中堅、管理職、役員などの階層別、法人取引や個人取引など業務別に、計50程度扱っているという。