北海道銀行がNISEKO出張所を開設

なお、地元の北海道銀行では、2016年末にNISEKO事務所を開設し、投資動向などの情報収集、観光振興活動への参画・サポートをおこなってきた。また、海外発行対応ATMや外貨両替機を新設し、倶知安町、ニセコ町とは地方創生に関する包括連携協定を締結した。

高橋克英『地銀消滅』(平凡社新書)
高橋克英『地銀消滅』(平凡社新書)

続いて2019年4月、さらなる開発・交流人口の増加および北海道新幹線の延伸などによる地域振興・経済発展が望まれることから、預金業務や融資業務など幅広いニーズに対応する拠点として、NISEKO事務所を引き継ぎ、NISEKO出張所を開設した。取り扱い業務は、口座開設や振込みなどの取次ぎ、法人向けの融資業務(個人の相談は取次ぎ)となっており、現金の取り扱いはなく、営業時間は平日午前中のみと少人数での運営となっている。

今後は、実績を積み上げながら、ニセコ地区でのフルバンキング機能を持った支店開設により、海外送金や両替に貿易関連を含めた外国為替取引、地元建設業者や不動産業者への貸出強化、外貨預金や不動産投資を含めた内外の富裕層向けの資産運用や融資業務などが展開できるのではないだろうか。

北海道銀行のみが持つ、ウラジオストックやユジノサハリンスクの拠点を活かし、ロシアの開発企業や投資家、富裕層を誘致できれば、一段とニセコの多様化に寄与することもできよう。

北海道銀行や北洋銀行の奮起に期待したい

なお、ライバルである北洋銀行の倶知安支店では、地場の日本企業への貸出を強化するだけでなく、「ニセコHANAZONOリゾート」を運営する日本ハーモニー・リゾートの取引銀行の一角も占めている。すでに、2011年から外国為替取引を強化することで、収益も拡大している。今後は、倶知安駅前通りにある現店舗を活かしつつ、ひらふ地区などスキーエリアへの2店舗目の出店により、重層的にエリアをカバーするといったことも考えられよう。

ニセコ興隆において、地元の小売り業者や建設業者に一部恩恵はあるものの、地銀がほとんど蚊帳の外では、あまりにもったいない。日本人富裕層の多くが首都圏や関西圏に居住しているため、これら地域の地銀にもビジネスチャンスがあるはずだ。コロナ禍を受けて、ニセコでは、今後は日本人富裕層向けサービスの展開など、出遅れた日系開発企業による投資の増加も見込まれる。

地元の地銀として、まずは拠点を築いた北海道銀行や北洋銀行の奮起に期待したいものだ。

【関連記事】
【第1回】行員のリストラ進行中に…「豪華すぎる研修施設」を新設する地銀の愚かさ
「新生銀の株価は安すぎる」業界初の敵対的買収にSBIが絶対の自信を持つワケ
「買えたとしても売るのは難しい」コロナ特需の終了で“億ションのババ抜き”が始まる
「10年前に420万円だった中古車が2000万円超」国産スポーツカーの異常な高騰のワケ
元海自特殊部隊員が語る「中国が尖閣諸島に手を出せない理由」