日本中のリゾートが「不良債権の山」になった苦い経験

なぜなら、ニセコの高級コンドミニアムや別荘では、貸出の審査、担保評価において、従来の日本の銀行による保守的な担保評価とされる積算法はむろん、収益還元法によっても、割高すぎて内部規定上、担保価値に見合う貸出額が出せない。

ニセコの高級コンドミニアムといった不動産は、高級外車や高級腕時計、クルーザーにプライベートジェット、装飾品、ワイン、美術品などと同じなのである。富裕層の嗜好品としての側面があるのだ。その価格には、機能性や合理性からの判断というよりは、ブランド価値そのものに重きがある価格形成となっているのも確かであろう。

モーターボート
写真=iStock.com/hdagli
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それだけプレミアムがつき、ブランド化しており、だからこそ将来的にキャピタルゲインも狙えるのだが、銀行からみれば、実体以上の価格評価がされており、プレミアム分が大きく下落するリスクがあるという判断なのだろう。

ニセコを含め日本中のリゾートが、1990年代のバブル崩壊により不良債権の山となった結果、多くの第二地銀を含む銀行が破綻し、第一地銀が業績不振に陥った。そして公的資金の注入を受け再建に苦しんだ苦い過去の経験と反省もあり、日本の銀行は、こうした不動産向け貸出に未だに慎重なのだ。

「富裕層ビジネスへの強化」を打ち出しているものの

日本の銀行は、法人向け貸出や住宅ローンでは、過当競争となり、利ざやが縮小するなかで、メガバンクから地銀に至るまで、ほとんどの銀行が「富裕層ビジネスへの強化」を打ち出している。

その割に、富裕層を顧客として抱え、かつ、実際にローン商品や資産運用に加え、相続・事業承継などで、収益の柱となる程の成果を上げている銀行は、ほとんどないのが現状だ。そもそも、富裕層そのものをよく把握しておらず、富裕層の預金口座はあるものの積極的にアプローチをできていないケースも多い。

そんな状況下、「パークハイアットニセコHANAZONOレジデンス」の1億円以上もする物件を全額キャッシュで買える、または株式や不動産など自己資産を担保に買える日本人は、まさに富裕層である。1億円以上の別荘を全額キャッシュで購入ということは、その10倍以上の金融資産があってもおかしくはない。

彼らの多くは、信用力の高い富裕層であり、日本中いや世界中のプライベートバンクや金融機関がお付き合いをしたいと望んでいるような顧客なのだろう。