候補者同士が和気あいあいとしていた代表選

所属政党に「排除」され、たった1人で党を立ち上げてからわずか4年。「政権選択選挙」と呼べる野党の「構え」を曲がりなりにも作った枝野氏の党運営を、少なくとも筆者は高く評価している。しかし、この辞任劇にはやや失望した。永田町の色に染まらない、旧民主・民進党とは違う政党文化を求めてきたはずの立憲民主党も、結局は「トップの首のすげ替え」で済ませるという、これまで同様の道をとろうとするのか――。

実際に代表選が始まると、その印象はかなり変わった。

泉、逢坂の両氏と、小川淳也元総務政務官、西村智奈美元副厚生労働相の4人の論戦は、過去の旧民主・民進党の代表選でしばしば見られたギスギス感がほとんどない、実に和気あいあいとしたものだった。理念・政策の面でも、力点を置く政策に違いはあっても、ニュアンスの差を超えるほどの大きな違いは見受けられなかった。

選挙戦ではしばしば「共産党との共闘はどうするか」「連合との関係は」「維新とは連携するのか」といった、政局がらみの問いが相次いだ。4人の姿勢の違い、さらに枝野前執行部の路線との違いをあぶり出す狙いのある問いだ。しかし、4人ともこうしたメディア好みの問いに安易に乗らなかった。代わりにそろって口にしたのが「党の足腰の強化」である。

枝野前代表は4年前に1人で党を立ち上げて以降、国民民主党や社民党の多くの議員を党に迎え入れて野党の中核としての立場を確立した上で、同時に衆院選における共産党などとの共闘関係を築き、どうにか「政権選択選挙」に持ち込んだ。だが「構え」はできても、地方議員や党員を増やすといった党そのものの地力を強化することまでは手が回らず、最後の最後で勝ちきれなかった。一言で言えば「時間切れ」であり、党勢拡大にはこうした地道な取り組みの「継続」が欠かせない。

4人は枝野氏の功績と限界を理解した上で、それを継承しつつ、見直すべき点は見直す必要性を訴えていた。頼もしく感じた。

ほとんど聞かれなかった「解党的出直し」という言葉

何より好感度が高かったのは、民主党時代から代表選のたびに党内でよく聞かれた「解党的出直し」という言葉――党のこれまでの蓄積を全否定するようなこの言葉――が、今回はほとんど聞かれなかったことだ。「○○氏が代表になったら離党する」といった殺伐とした動きも、ほとんど耳にしなかった。

だからだろうか。選挙戦が進むにつれ、メディアからは「盛り上がりに欠ける」と揶揄する声が上がり始めた。「党内の分裂を避けたいのでは」との論評もあった。だが、論戦を通じて4人の候補が、互いの違いよりも共通点を確認していくかのような選挙戦は、殺伐とした過去の野党の代表選にうんざりしていた筆者には、かなり新鮮に映った。

写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです

泉氏が西村氏を幹事長に起用するなど、代表選を戦ったメンバーをそろって執行部入りさせたことも、極めて自然に受け止められた。自民党総裁選でも見られることだが「対立候補を執行部に迎える」というのは、往々にして「激しい対立の後に党内融和を図る必要に迫られて行う」ことが多いものだ。だが今回の代表選は「党内融和を図る」などという言葉さえ陳腐化させるほどに、最初から「融和」されていた。