「政権選択選挙」にはならず与党が圧勝
2021年衆院選は、なかなか感慨深い選挙になりました。
選挙結果を総じて見ますと、野党が主張した政権選択選挙にはまったく届くことなく、自由民主党と公明党が絶対安定多数を確保、さらには日本維新の会の躍進で、いわゆる改憲勢力が憲法改正の是非を問う国民投票を実施できるだけの議席数を確保しました。
これにより、来年夏の参議院選挙はもちろん大事なのですが、それと併せて憲法改正の国民投票をやるべきだと維新・松井一郎代表からも一声かかって大騒動であります。
で、私ら選挙の周辺にいる人間も今回議席を確保された皆さんも惜しくも落選した皆さんも結果は重大に受け止めて反省し、これがゴールではなくスタートラインなのだという想いで取り組んでいくしかないんですよね。
今回、主に考察するのは「野党共闘はうまくいったのか」と「投票率が上がっても、もはや野党が有利とはいえなくなった」の2点です。
※おことわり 本来であれば特定の企業が集計した具体的なデータをお示しして議論するべきところ、一連の選挙戦の中で派手にデータを「お漏らし」した面白人物がいた関係で、論じるにあたり外にデータが出せなくなってしまいました。したがって、各社報道ベースの数字を取りまとめて「こういう傾向である」というおおむねの数値をお示しする形での執筆となることをお許しください。
「野党共闘があれば勝てる」と素朴に信じていた人も多かったが…
今回、立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党の4党が集結し、候補者調整から選挙協力まで踏み込んだ「野党共闘路線」が出て話題になりました。
私がよく知る野党関係者も「これで反自民党の投票の受け皿としてようやく機能する選挙戦になる」「野党共闘があれば勝てる」と素朴に信じている人が多く、立憲民主党の枢要な役職にいた人物らも共産党との選挙協力の取りまとめに奔走していて「まとまるまで、メディアで批判するな」と釘を刺してくるほどの気合の入れようでした。
もちろん、見ている側からすれば立憲執行部が共産党との協調に前のめりになっているのを見て「なぜこんなに純粋に信じられるのだろう」と不審に思うぐらい、野党が一本化すれば自民党に勝てると思い込んでいる節がありました。
野党共闘の妙味は野党がバラバラであるので各小選挙区で票が分散した結果、さほど支持の集まらない自民党候補との直接対決の構図にできず負けることが避けられるという点です。
端的に言えば、俗に「テンプレ候補」と呼ばれる日本共産党の組織や支部代表のような誰も知らん候補者を各選挙区でバラバラと擁立し、その結果、政権や自民党に文句を言いたい現状批判票が立憲と共産で分散してしまうので立憲候補が苦戦どころか自民党候補の得票と競る「当落ライン」にすら届かないという残念な状況がありました。
つまり、野党共闘とは共産党に勝てる見込みのない組織内候補者を立てられてしまい無党派の政権批判票が割れることを恐れたというのが数字面での効果となります。