野党共闘には一定の得票効果があった
一方、共産党は党勢という点では長期低迷傾向にあり、党委員長という指導的立場にある志位和夫さんの精励のもと頑張っているようですが投票所の支持傾向で言えばどの選挙区でもおおむね60代後半から70代全般が支持の母体であるという団塊の世代専用政党みたいな状態になってしまっています。
都市部の共産党投票者の年齢中央値はおおむね53歳から56歳のあいだに見られ、共産党の衰退は支持者と一緒に年を取って若い人たちの支持にウイングを広げられなかったという失敗と共にあります。
共産党がこれらの野党共闘路線に向かわざるを得ない理由は、やはり立憲民主党はまだ共産党に比べれば若い支持者や構成員を抱えているだけでなく、共産党機関紙「赤旗」の発行部数低迷の噂にも見られるように多数の小選挙区で供託金没収さえもされかねない冴えない候補者を乱立させられるだけの財政の余裕がなくなってきたことが背景にあるのではないかと思います。
そして、そういう「立憲民主党と共産党との小選挙区競合によるハンデ」がなくなった結果、今回は相応の良い結果が野党側には出ました。
今回の野党共闘で候補者が一本化された214の小選挙区のうち、野党が勝利したのは62でした。さらに85%ラインの僅差で決した選挙区が36で、候補者調整を行った選挙区では与野党伯仲になったという意味において、今回の野党共闘は一定の得票効果はあった、と考えることができます。
得票数は増加したが議席数を減らしてしまった立憲民主党
また、比例においても立憲民主党は党勢を回復させ、2017年衆院選で立憲民主党の得票は1108万(そして小池百合子さんの希望の党が967万)だったのに対して、低迷した2019年参院選の791万を経て、今回の2021年衆院選では1148万票を獲得しています。17年は立憲ブームでしたが、立候補者も増えて野党共闘が行われた結果、野党への投票数自体は底上げされ、今回の立憲民主党は「(見ようによっては)健闘した」のは間違いないのです。
しかしながら、冒頭にも述べましたように、得票の面では健闘したにもかかわらず、立憲民主党、共産党ともに議席の確保という点では選挙前勢力よりも落とす結果になってしまいました。これを読み解く鍵は、皮肉にも「野党勢力の一本化」とは無縁な新たな有力野党の誕生と躍進であったとみられます。日本維新の会と、国民民主党です。