固有の支持率が低い選挙区はそもそも勝ち目がなかった

野党共闘は得票面ではうまくいったとしつつ、議席数を維持することができないまま立憲民主党執行部である枝野幸男代表も福山哲郎幹事長も引責辞任するに至った背景は、野党共闘で候補者を一本化すれば無党派層の取り込みができて勝てると単純に思い込んだことに大きな原因があります。

それは、代替選択肢としての維新が出てきて勝手に躍進されたという単純な話ではなく、そもそも立憲民主党や共産党に対する各選挙区での固有の支持率が低いことが重要なのです。どう連携したところで「立憲支持」「共産支持」というコアの政党支持層が増えなければ自民批判票が含まれる浮動票頼みにならざるを得ず、政党支持率において勝ち目がまるでない選挙区では風が吹かず当然のように負けた、というのが実態ではないかと思います。

東京22区では野党の候補者調整に失敗し、れいわ新選組の候補者が立ってしまったため、明らかに勝てた山花郁夫さんが現職伊藤達也さんに押し込まれて敗戦。東京4区で活動をしていた井戸まさえさんは、なぜか東京15区に国替えさせられ、東京4区で立候補した共産党候補の谷川智行さんも、15区で最後まで健闘した井戸まさえさんも、どちらも落選してしまいました。

野党共闘の候補者調整は大変だったかと思いますが、おそらく、これらの「ちゃんと調整すれば勝てていた選挙区の議席をボロボロと取りこぼす」ことで結果的に立憲民主党の獲得議席は減ってしまったのではないかと思うわけです。

他方、ジャイアントキリングになった東京8区の立憲吉田はるみさんは、自民大物で石原派領袖にして石原帝国当主・石原伸晃さんに快勝しました。個別の選挙区の情勢をもっとしっかりと把握し、野党共闘で候補者の一本化をするならするで、各地域で最適な調整ができていれば立憲民主党は議席数を増やせたかもしれません。大阪以外。

「投票に行かなかった人が投票に来れば勝てる」という思い込み

各政党や調査会社では、選挙期間中であるかないかにかかわらず、定点的に政治の各種問題についての意識調査を主にネットパネル調査やグループインタビューなどを使って行っています。

そのなかで「前回投票に行かなかった人」や「政治に関心のない人」を対象に年数回、ヒアリングを行っているのですが、実のところ、選挙に行かなければいけないという意識は選挙に行かない人でも85%から9割近くの人は思っているのです。

ではなぜ投票に行かないかというと、「当日何かと忙しかったから(他にやることがあるから)」や「政治に関心がなく、誰を選んだらよいのか分からないから」といった上位定番の回答に加えて、投票に行かない半分以上の有権者は「自分の一票で何かが変わるとは思えないから」が入ってきます。特に自分の一票に対する無力感は若者に多く、投開票日当日も別に忙しくはなかったが投票に行かなかったという回答が来ることが多いわけです。

期日前投票
写真=iStock.com/Yusuke Ide
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ところが、ここで「前回は投票に行かなかったが今回(調査の都合で19年参院選が対象ですが)は投票に行った」と回答した人たちはおおむね30代前半から35歳ぐらいの人たちで、若い人たちが投票に意欲を持つようになった理由は「就職して、政治に関心を持つようになったから」がダントツ1位、次点が少し離れて「家族、友人知人が政治の話題をするようになったから」になっています。

厳密な調査ではないのであくまで傾向としてそういうことがあるのだという話に過ぎませんが、年齢が高くなるにしたがって投票率が上がるのは明確な理由があります。

まさに私たちの人生において発生する就職・結婚・出産などのイベントや、介護や育児といった人生の難題に直面すると、私たちが生きるにあたっていかに社会や政治に関わりが必要かと気づいた人たちから、億劫でもサンダルを履いて投票所へハガキもって行くことの大切さを知るようになるのだと思います。