スターフライヤーの置かれた立場

スターフライヤーは創業以来、独自の「豪華すぎないプチプレミアム」路線で順調に業績を伸ばしてきた。

1996年に誕生したスカイマークや、北海道が拠点のエア・ドゥも含めたエアライン各社は、多客高頻度の輸送で収益を上げるモデルを採用しているが、この流れに真逆を行く戦略を採ったことになる。

スカイマークは(後に全国展開するが)当初は羽田―福岡、エア・ドゥは羽田―新千歳という、高い収益が見込める高需要路線でスタートしている。それに対し、スターフライヤーは福岡県、第二の都市である北九州市を拠点に出発した点も異色だ。

スターフライヤーのプレミアム戦略の要諦は快適な機内環境にある。エアバスA320は6座席×25列で150人が搭乗できる。同型機を使うピーチやジェットスター・ジャパンは6座席×30列だ。つまり、スターフライヤーはシートピッチが34~35インチ(約86~89cm)ほど確保され、先述2社よりも最大10cmほど広い。

また、全席でタッチパネル式の液晶モニターがあり、ニュース番組、ドラマや音楽などが楽しめる。国内線で完備されているのも同社だけだ。黒塗りの機体塗装や、全席黒の革張りシートも高級感を演出している。

筆者撮影
機内で提供されるコーヒーとチョコレート

ブランディングも黒を基調に洗練されたもので、女性のファンも多い。

プレミアム戦略は、米国で失敗例が多く航空業界のタブーとされていたが、スターフライヤーは多くのユーザーから支持を集めることに成功した。

ところが事態は一転した。コロナ禍の生き残りの懸けた「企業の提携」という局面では、この戦略が足かせになってしまったというのが筆者の見方だ。

同業他社は続々と提携を図るが……

最大の問題は「提携先が見当たらない」という点だ。

筆者撮影
スターフライヤーのエアバスA320型機

規模はスターフライヤーより上の中堅エアライン2社(エア・ドゥ、ソラシドエア)は2021年5月に共同持株会社の設立で合意している。

フジドリームエアラインズ、アイベックスエアラインズ、ANAウイングス、J-AIRの地域航空4社は2020年12月、「リージョナル航空協議会」を立ち上げ、連携強化を図った。

2021年9月には、「地域航空サービスアライアンス有限責任事業組合(EAS LLP)」のANA、JAL、天草エアライン、オリエンタルエアブリッジ、日本エアコミューターの計5社による共同プロモーションが開始した。

コロナ禍の長期化を懸念するエアライン同士が助け合って販売するスキームであり、最大手のANAとJALが、部分的に手を組む関係も生まれている。